カートゥーンサルーン作品。「ブレッドウィナー」の監督による名作「エルマーの冒険」の映像化。卒なく良く出来た作品だと思いました。ただ尖っていないと言いますか、これは凄いというシーケンスはあまり無かったですね。
カートゥーンサルーン作品はもうブランド化していると言ってよいと思いますが、平面的なキャラクターやエフェクトが特徴的な映像を作り出す良い会社だと思います。児童書「エルマーの冒険」を映像化するにあたって、この平面的な特徴がマッチしていて良いと思いました。
色彩が良いです。原作だとドラゴンは原色でしたが、映像化するにあたって変更されてより良い色彩になって良かった。島の風景など一つ一つが色彩に飛んでいます。また、町と島の色調の対比、冒頭とラストの色調の対比もしっかりなされていて抜け目がない。
児童書らしく柔らかい質感を見せるために影領域の境界はクレヨンのような柔らかなものになるように処理されていました。
良いなと思うシーケンスは終盤近くにある主人公の夢、これぞカートゥーンサルーンと言うほどの平面的で幾何学的なエフェクトが幻想的。ただ、「ブレッドウィナー」のようにそういったシーケンスが連発されることが無く少し寂しい。
「エルマーの冒険」、だいぶ昔に読んだことがあるぐらいで原作の話は覚えていません。今回の映像化を見ると、主人公が島で問題を解決するとなぜ現実の方も解決してしまうのかは疑問ですね。猫やサイなど現実世界の人間の声と同じなため、メタファーになっているのは理解できます。ただ、「不思議の国のアリス」のような世界に迷い込む話なためメタファーがあまり機能していない感じがしました。
演出として言えば少し弱いです。ドラゴンが飛翔する盛り上がりのシーンの前に溜めがないため、飛翔の爽快感があまり感じられなかった。飛翔しても基本的に雲をすり抜けるぐらいで解放感のある青空みたいな映像が欲しかった。
【総評】
尖ってはいないですが普通に良く出来た作品と思いました。ただ普通すぎて満足感はあまりないです。「ブレッドウィナー」の方が好きかな。
カートゥーンサルーンには是非「100万回生きたねこ」を映像化して欲しいです。