Yoshishun

ミッキーマウス ザ・ストーリーのYoshishunのレビュー・感想・評価

4.0
“すべての始まりは、一匹のネズミ”

誕生から100年以上経過し、今なおディズニー社の顔として君臨し続けるミッキーマウス。
本作は、ミッキーの誕生、時代と共に移り変わるミッキーというキャラクター、そしてミッキーを主人公とした新作短編の制作過程を同時並行で描いたドキュメンタリーだ。

関係者らの証言からもわかる通り、ミッキーはウォルト・ディズニー本人を投影した存在だ。ミッキーがやたら冒険好きなのもウォルト譲りであり、時にイタズラを仕掛けるお茶目さ、愛する者は大切にする一途さもそのままである。アニメーターとしての道を歩み始めたきっかけとなったオズワルドをユニバーサルに奪われ、その経験を活かし決してミッキーをディズニーの元から離れないように尽力しただけに、人生の一部ともいえるキャラクターだったのだろう。

かつてミッキーマウスらの短編を何作も鑑賞していただけに、時代とともに描き方が変化していったのは興味深い。確かに『蒸気船ウィリー』等20年代の作品では、中々に暴力的かつパワフルな性格だったのに、ドナルドやグーフィーが台頭し始めた辺りから、目立った奇行などは見られなくなった。ミッキーがあまりに有名になりすぎて子どもたちの模範になりうる、いわば優等生キャラとなっていった。道理で晩年の短編作品はあまり印象に残らないものばかりなわけだ(あくまで私見)。

ルーカスフィルムや20世紀フォックスの買収、ポリコレを意識しすぎた作品群の応酬、劇場公開作品への不当な扱いなど、ディズニー社のイメージは悪くなる一方だが、ミッキーとウォルトが築き上げてきた夢と魔法の世界は益々広がり続けるだろう。



なお、さすがにミッキーの前にひれ伏すベイダー卿の風刺画は登場しなかった。
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