satoshi

クリード 過去の逆襲のsatoshiのレビュー・感想・評価

クリード 過去の逆襲(2023年製作の映画)
3.7
 『クリード』シリーズ3作目。前作でドラゴとの因縁が決着し、アドニスの物語、そしてロッキーの物語は終わったかに思えた。本作の敵はアドニスの忘れたい「過去」。過去からやってきたデイミアンと対峙し、過去を受け入れ、乗り越える物語でした。しかしそれは、目の前のデイミアンを倒して終わりではない。リングに上がり、デイミアンと向き合い、拳を交えて言葉を交わし、互いの過去を埋め合わせていく。書いていて「少年漫画みたいだな」と思ったが、そういえばマイケルB・ジョーダンはアニメオタクだった。

 本作にはマイケル・B・ジョーダンが影響を受けたというアニメ的演出が多々使用されています。彼自身が言及している通り、「はじめの一歩」感あるスローモーション、終盤で2人だけの空間が作られる、そしてクロスカウンターなどです。さらに、冒頭の幼いころのアドニスの部屋には「NARUTO」のグッズが(しかし、2002年なのに「疾風伝」になっていて、脇が甘いなと思ったけど)。後、クロスカウンターやるならもう少し出崎統的な間とかにしようぜとは思ったけど。

 「敵」であるジョナサン・メジャースが素晴らしかった。アドニスに対する複雑な感情を体現していた。本作のアドニスは金持ちになって、『ロッキー』1作目ではアポロが担っていた役回りをしている。デイミアンは彼の鏡像として、「持たざる者」として現れる。彼のおかげで本作はかなり救われていると思う。

 本作では、「トラウマを吐き出す」ことも重要な要素となっている。つまりは「弱さ」を見せる大切さを説いている点が現代の映画だなと思った。また、試合のシーンではIMAX画角になり、臨場感が倍増。新たな表現になっているなと思いました。

 本作の欠点は色々ありますが、いちばんはスタローンへの不義理でしょう。スタローン側の言い分だけだと判断しづらいですが、劇中で「ロッキーの現在」が全く言及されないのは納得がいかないし、アドニスはほとんどロッキーに言及しない。版権上の問題とかあるのだと思いますし、『クリード』サーガは『ロッキー』から独立したものである、と言えばそうかもしれません。しかし、それでも、ロッキーへの言及はすべきだったと思います。これに加えて、ラストのあのアニメーションなので、ちょっと私物化が酷いかなと思いました。

 なお、あのアニメ(SHINJIDAI)はネタにするくらいしかないのですが、マイケル・B・ジョーダンが日本アニメが大好きで、嬉々として作ったのかと思うと、どうにもネタにしづらいってのがある。
satoshi

satoshi