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異人たちのsatoshiのレビュー・感想・評価

異人たち(2023年製作の映画)
4.0
 山田太一の原作も大林宜彦の映画も見ていないが、評価は高いし、昨年亡くなった山田太一の追悼的な意味でも見てみた。全体的に端正な出来の映画だと思った。35mmフィルムで撮影した映像は、どこか夢の中にいるような幻想的な空間を作ってる。ここで本作は、ゲイの主人公を通し、孤独についての物語を描いてみせた。

 本作は亡くなった両親と再会し、自身がずっと感じてきた孤独を埋め合わせる物語。本作では、孤独は克服せねばならないものではなく、自分の中に存在するものとして、寧ろ向き合って肯定していく。しかしそれは孤独の賞賛ではなく、寧ろ「他者」と向き合うことで互いの孤独を埋め合わせる行為を指していると思う。

 他者と交わることは、互いを完全に理解し、癒してくれることを意味しない。アンドリュー・スコットは本来するはずだったゲイのカミング・アウトを親に行い、ステレオタイプな意見に失望する。ポール・メスカルとは世代の違いもあるが、愛を育む。こうしたすれ違いを通して、人間は交流し、孤独を埋め合わせる。孤独を理解し、寄り添える他者が人間には必要で、我々は自身の孤独を不可分なものとして捉え、それを埋め合えることが重要なのだなと思った映画でした。
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