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名探偵コナン 100万ドルの五稜星(みちしるべ)のsatoshiのレビュー・感想・評価

3.2
 見ていて、本当に俺は『コナン』シリーズのいい客だなとしみじみ思った。本作は1本の映画として見ると本当に酷くて、ミステリーとしてはもちろん、アクションアニメとしてもダメ。脚本も色々な要素がとっ散らかっていて壊滅的な出来(よくまとめた、という意味では頑張ってたと思うが)。では何がいいのかと言えば、とにかくキャラである。お馴染みのキャラがよく分からない事件に全力で立ち向かい、恋模様がどのような進展を見せるか気になっているファンとしてはとにかくアツくなれるのである。ここはファンと作品との間にある「マナー」が存在していて、函館が戦場みたいになっているが、それは「コナン(=死神)が来たせいでこんなことにwww」で処理され、人死によりも恋愛に熱中しているキャラのサイコ感にも「コナンだし」で処理される。一応、ドラマを語ろうとした形跡はあるものの、話があっちこっち行ってしっちゃかめっちゃか。しかし、最後の告白でスッとファンは泣けるのである。まさに終わり良ければ総て良し、キャラが良ければすべてよし、である。

 更に本作では、遂に「まじっく快斗」と本格合流を果たす(そして内容的に「YAIBA」でもある)。そして連載初期から言われていた、キッドと新一の関係も明かされ、最後に驚きのキャラが一瞬出る(隣で見ていた子供が「誰あれ」と言っていたのが印象的だった)。これらは本当にずっと追っているファンでなければ分からないことだ。つまり本作は、近年の傾向であった「キャラ偏重」に加え、「青山作品とのユニバース構築」、「今後の謎」+(そして本筋の話)をぶち込んだごった煮ハイコンテクスト型脚本なのだ。こんなもの、ファン以外が楽しめるわけがないが、現に特大ヒットしているのだから何も言えない。とはいえ、長年のファンとしては、昔のようにストーリーもきちんとしていた頃の映画もそろそろ作ってほしいんだよね。
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