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フィルム 私たちの記憶装置
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『フィルム 私たちの記憶装置』に投稿された感想・評価

4.0
【フィルムアーカイブ入門】
先日、国立映画アーカイブがクラウドファンディングを始め物議を醸した。博物館を巡る収益性や保護に関する議論はここ数年、美術界でも活発に行われており、数年前に国立科学博物館で似たような事例があった。個人的にはミニシアター・エイドで10万円出資したものの、確かにこのクラウドファンディングは成功したものの、閉館を先延ばしにしただけであり、持続可能性がなければ意味がないため、安易な参加よりかは社会構造を批判すべきと考えている。そうなった際に、フィルムアーカイブについて勉強する必要があると考えた。神戸映画資料館がVimeoにてフィルムアーカイブに関するドキュメンタリー『フィルム 私たちの記憶装置』を有料配信していたため、手始めに観てみることにした。これを観るとわかっているようでわかっていない現場の温度感やフィルムアーカイブの視点から観る映画業界といったものが少し分かった。

本作は映画史において映画を保存する活動がいかに遅れていたかを主軸に話を進めている。サイレント映画時代の作品は、一定の上映がされれば破棄されてしまった。また可燃性の高いフィルムが使われていたり、第二次世界大戦時にはドイツの頽廃芸術の動きで焼失した作品が多かった。アフリカにおいては、重要なフィルムが国外に流出してしまっている状況となっている。

アンリ・ラングロワを始めとする収集家などによって映画はなんとか保存されてきた。ユネスコがフィルムに対しても保存すべきとしたのは割と最近である。映画ではブニュエルの『忘れられた人々』を世界の記憶として保存すべき対象の候補となったが、実際に映画が世界の記憶として扱われたのは2001年の『メトロポリス』の復元版ネガフィルムからであり、その後、リュミエール兄弟の映画、キューバ映画芸術産業庁のラテンアメリカ・ニュースのオリジナルネガフィルム、16mmフィルム映画シリーズ『交錯する足跡と大陸の記憶、アメリカ州のフランス系住民たちの声』、『SHOAH ショア』などに認められた程度となっている。

フィルムアーカイブに関しても、保存環境が悪ければすぐにビネガーシンドロームなどによって破損してしまうため、温度等の管理にコストがかかるとのこと。また、スタン・ブラッケージ『The Dante Quartet』のようにフィルム自体にペイントが施された素材自体が作品の重要な要素となっている映画は厄介な問題を孕む。下手に手袋で扱うと、引っかかって破損するリスクがあるため、素手で取り扱う。ネガを複製したくてもできない。本作を観ただけでは分からないが、ワイルダーの『あなただけ今晩は』の70ミリプリントが褐色したフィルムから薄っすら見えると物理媒体を扱うことでわかってくることを映画にて提示してくる。

個人的に面白かったのはLTOの解説パートがある点にある。まず、物理媒体の劣化について比較がなされる。フィルムは50年、ビデオテープは20年、ハードドライブ5年、データテープ3年、光ディスクは2年とのこと。新しい技術であるほど劣化が早いと語られる(光ディスク2年は誇張に思えるが)。デジタルデータによる保存の問題は企画の陳腐化にあると語られており、ファイルを読み取る機械がなくなる問題が指摘されている。故にマイグレーションの必要がある。マイグレーションしながら保存する仕組みとしてLTOが紹介される。LTOはデータ保存用の磁気テープであり、30~50年もの寿命がある。実際に福岡市総合図書館でもLTOによるフィルムアーカイブが行われている。

しかし、LTOにも問題があり、以前から読み取る機械の互換性に課題があった。2世代以降前の規格のLTOは読めないのだ。いくら寿命がながくても、読み取り機の対応規格が連動していないため、定期的にマイグレーションする面倒さがあった。しかも昨年登場したLTO10では下位互換性が完全になくなったことで、LTOによる長期保存の仕方の見直しが求められているのだ。

今回、本作を観て改めてフィルムアーカイブの難しさを知ると共に、この領域をもっと勉強してみたくなりました。早速「映像アーカイブ・スタディーズ」を入手したので読んでいきたい次第である。

P.S.アーキビストにとってYouTubeによる野良で古の映画をアップする人は敵らしく、物凄い勢いでディスっていたのに笑った。
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映画好きが見れるドキュメンタリーやっぱり最高。胸熱とはこのことだ。ジョナスメカスの最後の言葉に尽きる。愛するものは死に物狂いで守る、本当に簡単なことだ。
フィルムの処理はお金もかかるしやはり先進国に送るしかないし、保存に関する理解もないままデジタル化が進んでいけば失われる作品はとてつもなく増えるだろう。こうやって経済的に弱い国の文化が消えていくのもつらい。
そして戦時中に世界中に散らばったフィルムが見つけられる興奮…大量に失われた日本映画の中にも名作と呼ばれたかもしれないものがたくさんあったんだろうなあ。というか、失われてもいい映像なんか無いよな。すべて貴重な歴史の一部。