ShinMakita

シモーヌ フランスに最も愛された政治家のShinMakitaのレビュー・感想・評価

2.9

1974年、女性厚生大臣シモーヌ・ヴェイユは人工中絶の合法化法案を提出し、根強い反対派の声を遮り議会通過に成功させる。そして1979年、欧州議会議長に選任された彼女は、80-90年代からはフランス国内で内閣の国務・厚生大臣を歴任し、常に弱者の側に立ちその権利と平等を訴え続けた…




「シモーヌ」

以下、ネタバレの上では眠れない。


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と書くと、「へえ〜」という感想で終わります。外国の女性政治家が頑張ったのを讃える伝記映画ね、はいはい。



…で、終わらせては絶対にいけない一本。


確かにエディット・ピアフは波瀾万丈だった。グレース・ケリーの物語もスリルとサスペンスを含みつつ映画オタクを楽しませるのに充分な娯楽作だった。しかし本作は、もうグウの音も出ないというか、鳩尾に一発喰らって息できないというか、それぐらいの重いパンチのある作品でした。だらーっと観ていたら、各エピソードの語りが速すぎて、しかも時系列が凄まじくバラバラで混乱必至なんだけど、考えるとちゃんと最初と最後が繋がる円環構造になっていて、「家族」という一本の筋で全編通っていたことに気付きます。エピソードがあちこちに飛ぶのは、あたかもシモーヌの浮遊する記憶が彷徨う感じで、実は効果的。アウシュビッツの過酷な過去と母親の教えが彼女を正義の道に向かわせて、刑務所の待遇改善・アルジェリア収容所の改善に疾る司法官時代、エイズ患者支援に尽力する大臣時代へと繋がるわけですね。見終わったあと、頭の中で再構築すると「何てスゲェ女なんだ!」と驚くわけですよ。オリヴィエ・ダアン監督の演出力に舌を巻きつつ(本当にクリムゾンリバー2の監督かよ⁈)女性伝記映画の最高峰と言わざるを得ないところ。オススメでございます。
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