sakura

それでも私は生きていくのsakuraのレビュー・感想・評価

それでも私は生きていく(2022年製作の映画)
4.4
普段はこちらには率直な感想だけを書くのだけど、先にインスタ用の文章をまとめてしまったらこれ以上は書けない気がしたので、転記。

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ミア・ハンセン=ラブ、やっぱり好きだ
と、作品を観れば観るほど思う。
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男が/女がという話をしたいわけではないのだけど、やっぱり未だ一般的には家事や育児や介護などの「ケア労働」を担う割合が女性のほうが高いとされる今の時代、女性の人生は、ときとして「誰かのもの」になってしまいやすい。
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パートナーが悪いとかそういうことではなくて。社会の仕組みとしてそうなりやすい以上、女の人は男の人よりも人生の時期によって、自分にとっての大切なものが異なることが多いように思う。
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ミア・ハンセン=ラブのそれぞれの作品でそれぞれの主人公を通して、あらゆるタイミングでの自分の人生に生じうる可能性を感じられるかんじが、好きだ。
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そして本作は、人生における“自分の人生のはずなのに「誰かのもの」になりやすいタイミング”が幾重にも重なったサンドラの物語。
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仕事に育児に介護に、暇なんてないはずの彼女が再び恋をする喜びを取り戻した束の間、恋と同時に「性」に熱を上げる姿は、だから、清々しくすらある。
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「恋」も本来とても個人的なものであるはずなのだけど、恋の延長線上に「結婚」「家庭」「生活」があるシステム上、そして娘がいるサンドラにとっては特に「恋」は個人的なものだけではなくなってしまっていて、そう思うと「性」は「恋」以上に個人的なものだと言える。
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だからたぶん、わたしには彼女がクレマンと求め合う姿は、彼女が自分のことだけを考えている瞬間に見えて、それが清々しいと感じる、に繋がったのだと思う。
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とはいえ、彼女の“新しい恋”はなかなかに平坦なものではなく、同じシングルマザーという立場であるわたしは、自分にはこの体力と気力はないな、と思ってしまった。

仕事も生活も育児も全部ひとりでがんばってるのだから、恋愛でくらいは飽きるほどに大事にされたい、と思ってしまうわたしは、たぶんまだまだ全然幼い。
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ほかにも、
サンドラ自身もまた離婚した両親の娘であること、母親は父親と離婚できても父親と娘の親子関係は切れないということ、そこを思うとサンドラに未来の娘を重ねてしまって、また全くベクトルが異なることを考えたりもした。
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女の人生って、ほんとうに大変。
それはケア労働を担うことが多いという現状もだけど、男性に比べて人生における重要な選択の数が多い/生き方のバリエーションが多いという生物学的な意味でも。
人は一日にできる選択/決断の数が限られている、というのは有名な話で、選択肢が少ないことも時として不幸だけれど、選択肢が多いというのもまた、大変。
選ばなかったほうの人生に思いを馳せたりもしちゃうし。
それでも、
それでもわたしは女に生まれてよかったと思うし、何度生まれ変わっても女がいい。どうしてなんだろう
それはまだちょっと、自分でも分析できていない
sakura

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