りょうすけ

愛と哀しみのボレロのりょうすけのネタバレレビュー・内容・結末

愛と哀しみのボレロ(1981年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

「愛と哀しみのボレロ」

「男と女」のクロード・ルルーシュが第二次世界大戦前から1980年代に渡るフランス、ドイツ、ロシア、アメリカの2世代4家族を描いた一大群像劇。どんな作品か全く知らず「午前十時の映画祭」で上映されているという理由だけで鑑賞したが、とんでもない超大作だった。

4つの国の見知らぬ人々、彼らの共通点は「音楽」のみ。登場人物が多すぎて、それぞれの関係性が段々とわからなくなっていくところが難解ではあるけれど、最終的に全ての登場人物の物語が繋がったとき、3時間観たことに対する達成感が感じられる。チャリティー公演のシーンは、まさにグランドフィナーレと呼ぶに相応しいシーンだろう。

グランドフィナーレは勿論のこと、それ以外にも印象的なシーンが多かった。その中でもドイツのピアニストが過去のヒトラーとの会合のより、その後のキャリアに支障を来たしてしまうシーンは、現代の芸能人でも同じ様なことが起きてるよなぁと思いながら見てしまった。まぁ、ヒトラーは当時のドイツにおいては謁見すること自体が名誉だったわけだし、元々犯罪歴がある人物との関係性を後から指摘されている芸能人とは違いかもしれないが。

あと、ユダヤ人の強制収容所のシーンも虐殺を描くことなく、輸送列車の中だけを描いていたことでより悲壮感を増していた。何としてでも赤子をフランスの中に置いて行こうと列車の中から線路に下ろすシーンは何とも言えない悲しさと生物としての本能的なものを感じた。

「愛と哀しみ」というタイトルの通り、多くの愛と共にその裏側に存在する多くの「哀しみ」をも感じる作品だった。でも多くの「哀しみ」を乗り越えた先に、旧時代の敵だった各国の人間が音楽を介して集まり平和を誓うあう人間讃歌の映画でもある様に感じた。
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