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ゴジラ-1.0のatsushiのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
3.8
映画『ゴジラ』は確かにゴジラの冠映画だが、しかしそれ以上に、恐怖に慄く役者陣のリアクション映画でもある。

1954年公開の初代ゴジラは戦後間もない日本の観客を恐怖のどん底に陥れた。言わずもがな、ゴジラは核兵器のメタファーであり、"恐怖"そのものでもあった。衆知の事実だが、それからのゴジラはヒーロー化、キャラクター化を進め、いまや東宝の看板であるだけでなく、日本映画の象徴と言っても過言ではない。一方で海を渡ったハリウッドではゴジラは神格化されている。

山崎貴は賛否あれど2000年代から大衆娯楽作を次々と世に送り出してきた。誤解を恐れず言えば、VFXという槍一本で日本映画界を戦っている稀有な人間である。

2016年空前の大ヒットを記録した『シン・ゴジラ』は記憶に新しい。庵野秀明はゴジラを3.11のメタファーに置き換え、ゴジラを再解釈してみせた。『シン・ゴジラ』ではVFXを使って特撮を表現するという離れ技をやってのけたアニメーション会社・白組。今回、山崎貴は白組スタッフを再招集し、今作の完全CGゴジラに挑んだ。制作費はレジェンダリー版のおよそ20分の1とも言われている。

山崎貴は一体ゴジラを使って何を描いたのか。それは原点回帰。ゴジラをヒーローから引きずり下ろし、あの54年版の恐怖の象徴としてのゴジラに今一度立ち返った。いや、絶望感で言ったらオリジナルを超えているかもしれない。これが山崎貴の見せる−1.0。前述の通り、今作は『シン・ゴジラ』の影響を多分に受けた作品であり、東宝は着実に日本産ゴジラの再建を進めている。令和ゴジラシリーズの幕開けは近いのかもしれない。

2023/11/04 1回目
【2023年111本目】
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