しー

ゴジラ-1.0のしーのレビュー・感想・評価

ゴジラ-1.0(2023年製作の映画)
4.8
まず日本のVFXもここまで来たのがシンプルにすごい。

ぜひ劇場の大画面で見るべきだし、なるべくなら良い環境の映画館で体感したほうが楽しい。
映画館を出たら興奮気味に知らないお爺さんが電話で今までで一番おもしろい!と力説してた。ジュースでも奢りたい気分だった。



戦後、苦渋の思いで積み上げて来た人々の生活がゴジラに破壊されていく、今作では敗戦後の生活が元に戻っていく時代背景のため、初代からあるコンセプトが強調されていたと思う。人間パートの完成度が高いおかげもあり、ゴジラの恐怖や災害のような無情さが強調されていた。

かなり良い意味でalwaysを作った監督だなぁと感じた。こんなにドラマの密度が濃いゴジラはなかなかないと思うし、かなり良い味してたと思う。

ゴジラの出自に関してはこれまでの作品で、
・核実験で住処を追われた恐竜(初代)
・核実験の放射能で突然変異した恐竜(平成vsシリーズ)
・太平洋戦争の戦死者の怨念(ゴジラモスラキングギドラ大怪獣総攻撃:GMK)
(他にも諸説あるけど)上の3つを解釈次第ではこの作中から派生させられるわけで、そう言った意味でもタイトルに納得感がある

サイズ感が一番怖い。ジュラシックパークでいうとティラノサウルスよりラプトルの方が子供の頃怖かったように、はっきり人間を個人レベルで認識してくるサイズ。正直小さい方が怖い。漁船サイズの船を絶対○すモードで追いかけるシーンは怖すぎた。あのシーン、音楽がひたすらノイズのような音になっててホラーのような演出でゴジラとしては新鮮だった。


シンゴジラはただ歩くだけ(攻撃されたら反撃するけど)で何を考えているかわからない、人間の理解を越えた自然災害のような畏れや怖れであったのに対して、明らかに人類に対し殺意剥き出しの生物としての意思を感じるゴジラだった。

神木隆之介の、君の名前は?って台詞で吹きそうになった。

作戦会議でおにぎり食べてた俳優、気になった笑

あと子役素晴らしい。頑張ってた。えらい。









ここからネタバレ。











戦後のPTSDを患った青年と昭和の日本の再生ストーリーを戦艦スペクタクルに載せたゴジラ映画。海戦シーンの迫力がすごい。艦船の重量感、大砲の轟音、大波を質量で乗り越える感じの力強さがゴジラと立ち向かう描写と合ってたと思う。またこんなの作って欲しい。
海戦のシーンでゴジラが身体を起こすシーンは見せ方がすごかった。鳥肌がたった。

兵器で歯が立たないものに科学で立ち向かうという骨格は、初代1954、シンゴジラと通じるものがあった。

個人的に整備兵、橘の戦争を終わらせる物語でもあったなと感じた。橘は自分が整備した機体で特攻していった兵士への感情で戦中、戦後苦しんできた。敷島の手紙に激怒し、夜会いに来た時の姿は髪も髭もボサボサで世の中で暮らすことに馴染めていない風貌だった。震電に安全装置を付け敷島を生還させることで橘の戦争もまた、終わらせることができたのだと思う。

また最後の作戦に連れて行ってもらえなかった水島が、作戦終盤に大量のダグボートを率いて来る。これは居酒屋で予備作戦としてのゴジラを引き揚げる際に船で吊り上げたらどうか?と提案したものの与えられた艦では無理だと一蹴されたシーンを思い出す。ならばとその後、自分なりに考え、船を牽引する力のあるダグボートをかき集めてきたのだと思う。自分のアイデアに対して不足するものはなにか、何をすれば良いか考え行動に起こすという水島の真っ直ぐなひたむきさが良い。また戦争用の艦艇に出来なかったことを民間の力をかき集めて乗り越えるということがまさにこの映画ならではのテーマを感じた。

最後のシーン、典子があれで助かるわけないしょと思いつつも盛大に泣いた!許す…!

…となった人達をどん底に叩き落とす浜辺美波の首筋に着いた何かタトゥーのような模様。浜辺美波がゴジラの何かを取り込んでしまったのかして再生能力を得てしまったことを示唆しているかのよう。
再会のシーンで明子が駆け寄らないのは演技が難しかったのかな?っと思ったけど、子供だから本能的に何かを察知したのではないかという考察を見かけてなるほどそれありそうとなった。
シンゴジラのラストシーンを彷彿とさせる、後味の悪い恐怖感。
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