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未来戦記の都部のレビュー・感想・評価

未来戦記(2022年製作の映画)
2.0
昨今 アジア映画の映像のレベルは順当に向上している印象ですが、香港映画である本作もその例に漏れず、ハリウッドに顔負けしないCGIを駆使したSF作品のビジュアルとして強固さを持つ場面が数多く展開されます。
しかしながら本作の作品としての独自性や長所はそれだけに留まっている印象で、世界観や状況設定は並あるSF映画の浅慮なパッチワークに過ぎず、その見掛けは壮大な作品を100分程度という短い尺に押し込めたことで中身を伴わない陳腐さがより悪目立ちしているというのが実情です。

機械に対する機能美への拘りも凝っているようで、『パシフィック・リム』や『アイアンマン』などの既存の大作映画の潮流をなぞっているに過ぎない構図が目立ち、パワードスーツを初めとするSF的ガジェットの数々に対する浪漫を感じる視点が大して散見されなかったのも残念なポイントでしょうか。サンプリングの作品としての愛は感じるのですが、それ以上を更新することなく物語は終幕していくので、オタク的なSF作品としての盛り上がりに大きく欠けるんですよね(本作は大衆SF映画の立ち位置でオタク的な拘りがそれほど重要ではないのでこの辺は個人的なゴネのようなものですが)。

目まぐるしく変化していくカメラアングルによるパワードスーツのアクションはシークエンスそれぞれを切り取ると躍動感があり、その点は見応えがあって良かったですね。映像的には一貫して派手な姿勢が続くので退屈とは無縁のはずなのですが、どうも映画的な快楽よりも技術の躍進を目にした際の感心という側面が強くてそれが作品のテンションの向上に繋がりかねているのが気になります。

先述したようにその躍動的なアクションに付随するストーリーはオマケ程度の物で、SF映画としては幾度も見たプロットなので目覚ましさがないのですが、それに倣うようにして各キャラクターの性格も模範的な域を出ないのが本作ならではの独自性を大きく欠いている要因の一つかなと。物語は任務に挑む隊員とその過去回想の挿入による交差で進展していくのですが、後者のエピソード群があまりに薄弱なので最低限の行動原理しか把握出来ず、感情移入やキャラクターへの没入感を得られないまま物語が進展していく為に終始乗り切れない派手な場面が続く構図となっているのは普通に脚本が上手くないな……と。

アレですね、ゲームの新ハードの発売日同日に発売される 新ハードの新機能を発揮してそれを実感させる為だけに作られたゲームソフト的な味気なさや素っ気なさがある。

総評として、アジア映画枠のSF映画としては映像レベルが極めて高い作品ですが、ストーリーやキャラクターという作品の核を固める部分がその映像にまったくもって見合っていないので、高品質な映像に対して作品としての完成度はかなり低いように思える一作です。
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