千年女優

怪物の千年女優のレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
3.5
夫に先立たれて女手一つで息子の敏を育てる母親で、近所で火事があった日以降様子のおかしい敏を気にかける麦野早織。原因が担任教師の保利によるハラスメントだと知って釈明を求めるも学校はマニュアル通りの対応を繰り返し、挙句には保利が敏が同級生の星川依里を虐めていると仄す。各々の視点から事態の真相に迫るドラマ映画です。

『万引き家族』でパルム・ドールを受賞するなど世界的評価を得る是枝裕和作品で、普段は自ら執筆する脚本を企画の川村元気の引き合いもあって『花束みたいな恋をした』の坂元裕二に任せ、音楽は今年急逝した坂本龍一が担当。少年の性自認を主題のひとつとした物語がカンヌ映画祭で賞賛されてクィア・パルム賞と脚本賞を受賞しました。

「対岸の火事」に始まる物語は坂元脚本ということもあってか是枝作品としてはややあからさまで、主題の「多様性と分断」と「真実」追うサスペンスの喰合せの悪さを『羅生門』の多視点で藪の中に葬っている感はあります。それでも流石の子役演出で素晴らしい演技を引き出して、例え一時でも美しい「台風一過の青天」を捉えた一作です。
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