このレビューはネタバレを含みます
序章で「どこかに悪さをしている”怪物”がいるに違いない」と思わせておいて，そんなものは存在しないというのが少しずつ明らかになる．これは面白い構成だなと思った．あえて言えば，登場人物の考え方や特徴が僅かに標準からずれていて，そのずれは通常は無視できる程度のものであるはずなのに，それが大きな歪みとなって一連の事態を引き起こしている．例えば，「そんなんじゃ男らしくないぞ」などと今の時代なら一発アウトな発言を平気な顔で言う先生（出版物の誤植探しが趣味），キャバクラ（ガールズバー？）に通いマジョリティな性的指向しか許さない友達の父，息子には一般的な家庭を持って欲しいと望む母，不倫中に事故死した父，孫の喪失から立ち直れていない校長先生，キャバクラに行っただとかなんとか真偽が怪しい噂を流す近所の人々，そして惹かれあう2人の男児．自身の内面のずれを「怪物」と言って苦しむ子どもと，それらを完璧に内面化していて無自覚な大人の対比を見てると，途中で堪らない気持ちになった．どちらかというと本当の怪物は他人を規範に押し込めようとする大人の方であるというメッセージを感じたかな，わかんないけど．
これは些末なことであるが，鼻血が出た時点で親に一本連絡入れるとかするべきだろう．最近の学校の先生はトラブルを避けるためにそのように先手を取って連絡していると聞いたことがある．また，子どもの言うことを全て真に受けている母親も，まあトラブル起こしやすいよねと思った．思春期の子どもなんて嘘ついてなんぼだし
