KingKazukiManji

怪物のKingKazukiManjiのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
5.0
題材はわりと重く、リアリティがあるからこそ観ていて辛い話ではあったのだが、それを超える満足感があり、観て良かったなと心の底から思えた素晴らしい作品に出逢えた。

母親、教師、子供の3つの視点から描かれている、所謂羅生門的な物語運びは、情報過多な今の時代と上手くマッチしていて、とてもよかった。特に羅生門と違い、登場人物の粗を探し、真実はなんだったのかを見極めるのではなく、3つの視点から観ることによって、彼らの心情を細かに描いていたのが素晴らしかった。

湊の葛藤が上手に描かれていて、それが教員への悲劇に繋がってしまうというのが切なかった。学校における秘匿体制と、小学生における性自認の不安定さと難しさを考えさせてくれた。クィア・パルム賞受賞、なるほど納豆させられた。

結局本作において、環境の変化というものがないので根本的な解決には至っていないが、心情の変化というものがあったので、決してネガティブな終わり方ではないだろうと思えた。精神的な成長がハッピーエンドか否かは、観客の解釈次第ではあるが、嫌いではない綺麗な終わり方ではあった。

怪物ってタイトルが難しすぎた。
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