Hina

怪物のHinaのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.9
時系列を崩して、伏線を敷いていくミステリーの構成となっている。

だけれどミステリーと違うのは、その伏線の回収の仕方だと思った。

散らかった石を回収していって、道を綺麗にしていくのがミステリーなら、この映画は落ちた宝石を絹のハンカチで拾い上げていくような優しさがある。

提示するのは、綺麗になった道の正体ではなく、拾い上げた宝石の方であって、ここがこの映画の、映画師の業だと思う。

一見、ある一つの悲しい結末しか浮かばないように思えるけれど(詳しくは言えない)、台詞や映像を紐解けば、いくつかの違った結末にも終着できるように、観客に選択肢を残している。(転生という話題の他に、大切なひとの夢を見るという話題や、まだ橋を渡っていないという映像で終わる点など…)

これは観た人が好きに結論づけていい映画であると言える。

もちろん曲も素晴らしいし、よくこんなロケーションを見つけるなあと感動するほどの映像の数々も芸術。

個人的に「おお!なんだこの映像!」って思ったのは、泥に塗れた窓を内側から映して、雨が星のように見える映像。
あのアイデア好きだったー🥰

また、大人達が決めつけて奔走している問題は、子供達目線では本質的に間違っているという事も提示している。

子供達を「測れる」と思い込んでいる大人が、まんまと自分達のミスリードにハマって茶番劇を演じている間、子供は全く別の次元で物を考えている。

子供達が大人びた発想で、大人びた嘘をつくはずが無いと思い込んだ全員が怪物であり、引いては、この世界の人間同士、企業や国家間、宗教や文化間の、互いのミスリードその物を「怪物」と呼ぶ。

って感じのメッセージがある。

唯一(?)怪物ではないとして描かれるのは、田中裕子さん演じる校長で、全てを俯瞰的に見、子供と肩を並べて自分も嘘つきであると認められる大人である。

が、彼女でさえ、孫に関する事件や、その写真をあざとく利用して学校を守る姿勢の描写など、どこまで完成した人間でも、人間である以上完璧ではない。
という演出も見られ、その辺にも深いメッセージを垣間見ることができる。

文句なしの最高峰の映画、日本の誇りだと思いました。

というか、あの子役の2人は間違いなく、名俳優になる。演技やめないでねーっ笑
Hina

Hina