どらどら

怪物のどらどらのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.8
「正しさ」に押しつぶされそうな社会で「生まれ変わる」のでももちろん「治る」のでもなく、そのままただ離脱する
その先には言葉もいらないし、関係性に名前もいらない

ある種ミスリーディングなタイトルは僕はわざとだと思ったし、クィア映画として視座が足りないという批判を元々目にしていたけれどあまりそうは感じなかった
(もちろん単に自分が勉強不足な可能性はあるので断定はできないが)

クィア映画として新しいとは思わないけれど、複雑なことを複雑なまま、物語のカタルシスなど無視して真剣に描いたという真摯さに感動した

この社会で規定されている「正しさ」=男性主義的な価値観って誰も得していないしそれを振りかざす方だってやっぱり苦しいんじゃないの?という映画の優しさ
中村獅童にまであたたかい眼差しを向けてるのはもはややり過ぎだろうと思わなくもないけれど、この映画は新しい「正しさ」を提示することも拒んでいる

坂元裕二的な会話劇の妙というよりは是枝映画感がすごく強かった
でも、人物設定は是枝裕和脚本では出てこなさそうな造形の人物が多くて、坂元裕二感をそこで感じつつ。
坂本龍一の音楽が至高

この映画が炙り出した有害な正しさを振り回している人たちは、仮にこの映画を見ても気づかないんだろうなというほどに丁寧な作りの映画
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