sakura

怪物のsakuraのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
3.3
この先、我が子の「知らない姿」「見たことのない表情」「把握できない出来事」はどんどん増えてゆく。そのことを思うと恐ろしくなった。

羅生門形式の作品にしては、重なる部分がわずかですごく見やすく分かりやすく作られているなあと感心した。

なんか、たぶん娘が来年から小学生になることがおおいに影響しているとは思うのだけど、学校ってしんどいな、と思った。
「誰しも誰かにとっての怪物になりうる」は見れば誰しもわかることだけれど、裏を返せば「その人単体であれば誰しも怪物ではない」とも言えるわけで、校長という立場が、保護者と教育委員会の板挟みなった学校という環境が、いじめという行為の一人ならやらないことも大勢になれば簡単にできてしまう性質が、一人の人間を怪物にしてしまう。

今思えばなんで一度もいじめられなかったのだろうと不思議なのだけど、一度もいじめられた経験がないのに、学生時代は本当に生きづらかった。わたしがわたしのままでいられた瞬間も場所もなかった。人にどう思われるかばかり気にして、悲しいかな察知能力と適応能力が高かったので、その場における最適解を出し続けてきた。
まあだからたぶんいじめられなかったんだな。

そのわたしの「今求められている最適解を出し続ける能力」は、怪物に転じやすいと自覚している。

だから大人になるにつれて、集団の中で生きなくてよくなって、自分が自分のままでいられる人とだけ付き合えばやっていける世界はとても息がしやすい。

でもだとしたら、学校って本当になんだろうと思ってしまった。たとえば不登校の子どもに対して、「学校は勉強だけじゃなく、集団生活を学ぶ大事な場だ」という意見がなくはないけれど、
集団生活ってできなきゃいけないだろうか。その未熟な集団生活のせいで、人から傷つけられたり、人を傷つけたりしてしまう、それ絶対に通過しなければならない過程だろうか。わたしは通過した上で今があるからなくてもいいと思うだけで、やっぱり通過していなければ大人になってから苦労が生じるのだろうか。

来年から「小学生の子を持つシングルマザー」になるけれど、わたしは安藤サクラ演じる母親ほどがんばれない。
早々に同じ学校に通わせ続けることを諦め、学校でのあのやりとりを録音して教育委員会なりマスコミなりSNSなりに流して社会的にぶちのめし、転校した先で同じことがあったら何度でもそれを繰り返すだろう。
あんな、身一つで、自分がめんどくさい奴扱いされて、「感情的で過保護なシングルマザー」として見られることに耐えられない。虎視眈々と無表情で録音しばら撒く自分が、色鮮やかに想像できる。

あまりに果敢に挑む安藤サクラ演じる母親を見ていると、真正面から挑みすぎだろとじれったく思う反面、ここまでできる母親じゃなくてごめんねという気持ちにもなる。
学校、そこに10年近くも通わせ続けることができるだろうか、我が子を真っ当に大人にすることができるだろうか、と心底不安になった作品でした。

星川くん、愛らしすぎてつらかった、、、
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