怪物のakiのネタバレレビュー・内容・結末

製作陣が尊敬する方たちで固められてるのでかなり期待を込めて観てしまった。でもしっかり納得できる作品だった。

おどろおどろしいタイトルや広告に反して、物語は後半になるほどに映像も感情表現も音楽も全てが美しく眩くなっていくのが印象的だった。
観終わったあと悲しいような清々しいような不思議な感覚になるのは、映画という視聴覚全てに訴える表現だからこその成せる業で、小難しいことを何も言語化できなくても「美しい映画」として作られているのは凄いなと思った。

とはいえ邦画だと特に作者の主張を読み取ろうとしてしまうのが悪い癖で、端的にいうと所謂「アンコンシャス・バイアス」についての話だった。

すごい皮相的な物の見方をしてしまったり、配慮が欠けていたりみたいなのを、昨今のSNS社会やマイノリティの権利に対して自分も気にしていたからまさに今ここでという感じ。
そのメッセージ性が強すぎたのはちょっとあって、若干途中で台詞に対して「この言葉定期的に出すぎでは…？」とかあえて勘違いさせやすいようにつくったみたいなシーンに「いやもう少しなんとかなるやろ…」みたいなことは心の中でツッコミを入れつつも、あらためて自分含め万人が無意識に固定観念を持っているということを散りばめた言葉やシーンを回収していく中で認識した。
物語だと誰が怪物(=悪いやつ)かをすぐ考えてしまいがちだけれど、そうではなくてそれぞれの人の物語に寄り添うこと、自分もまた誰かの怪物たりえると意識することが必要だと思う。
桃太郎の鬼視点の話みたいなのが昔ネットで流行った気がするけどそれの多重構造版。(ここはやや強引ではあった)

映画の結末は儚く悲しいけれど、生まれ変わることなくそのままの自分でいながら誰もが当たり前に幸福でいられる、そんな理想論に近いような世界を夢見てしまえるような美しさだった。