トリス

怪物のトリスのレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
5.0
その日映画館は全席満席だった。
ここで映画を見てる全員が
「怪物はこいつだと。」何度も絶対的な自信の中で、憶測を繰り返し、正直に話せばもっと事態は良くなるのに」と強く思いストーリーが進む。

しかしラストに近づくにつれ、行き場のない人間の複雑な心理に触れ、前半この映画をどこか外側から口出すように見ていたが、気付いたら映画の中に取り込まれていた。



大好きな坂元裕二脚本と是枝裕和監督の実力者だけあって、こんだけ何人もの視点や時系列を使ってもちゃんと理解出来るようにしている腕もさすがだし、このタッグが大切にしてる人間の複雑さにぴったしな、子役や田中裕子や永山瑛太や角田晃広などあげるとキリがないほど役者さんがよかった


ここからネタバレ⚠️

とくに好きだったシーンは
初めの歪むような吹奏楽の管楽器の音の表現だ。不穏感が漂う表現だが、この音は
伏線回収で、どういう意味なのか後に理解出来る。

城定秀夫「夜鳥たちが鳴く」の冒頭でも鳥の鳴き声が使われていたが、それは象徴的で比喩的に利用されていたが

この映画ではただの伏線回収ではなく、校長と奏の抱えてる、言葉にできない言葉として吐き出す行為として、坂元裕二らしい形で提示している。


それがただの行為の形式だけではなく、音としても非常に音の歪みが嫌で苦しくて、曲にもちろんなってるわけではないが、聴くのに耐えれないほどの強い意志を感じる音。

校長の全力で吹く後ろ姿も印象的で忘れられない。



そして龍一先生の音楽。
とても美しく映画に寄り添っていた。

映画音楽はどこか、味付けを強くしたり、ドラマチックに見てる人を誘導するところがあるがか、やっぱ龍一先生の音は、映画の人物の感情への理解を感じる…
トリス

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