ぺれ子

怪物のぺれ子のネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.7

このレビューはネタバレを含みます


私はネタバレが好きじゃないのでいつも映画の前情報を入れずに映画館に行きます。なので、この映画もちょっとCMで見た「モンスターペアレントと思われている親」「教師らしくない教師」「誰が怪物なのか」とポスターの男の子たち、くらいの情報で見に行きました。

結論、思っていた映画とは全く違っていて、本当に見て良かった。

途中まで、どちらかの男の子がサイコパスオチなのかな?と思いながら見ていました。星川依里<柊木陽太>の父親が「あいつは怪物ですよ」なんて言うから、育てにくさを感じたりしていたのかななんて思って……ここの「豚の脳」というキーワードにはひっかかりましたが。

保利道敏<永山瑛太>が麦野湊<黒川想矢>に謝りたいと言って、麦野早織<安藤サクラ>と一緒に車で向かうシーンから、これから子ども視点でこの物語が解き明かされるのだな、とわくわくしました。わくわくと言うのは、CMやそれまでの展開もあり、サスペンス的なお話かと思っていたからです。

子ども視点を見て、すぐ初めの描写から思春期や環境や自意識に苦しむ子どもたちの物語だと分かりました。
靴をはんぶんこして片足でけんけんして帰っていくふたりに、なんだかそれだけで幸せそうなふたりがいてよかったぁと泣けてしまいました。

山奥の電車のシーンは外側じゃなくて内側が宇宙だけど、銀河鉄道の夜が頭をよぎった。なんで怪物のカードなんてつくってるんだと思っていたけど、こういう遊びのためにつくってたんだね。
最初、麦野湊くんがお母さんに人間の脳と豚の脳って……とか、色々と質問するの、小学5年生にしては不思議な質問だな、いじめられてるのかななんて思っていたんですが、やっぱり疑問が生まれるのって何か理由があるんだなぁって。
どういう言葉を使うのかが難しいけれど、星川くんはもっと幼いころから同性が好きで自覚も早くて、麦野くんは星川くんとの大切な経験の中でそういう自覚が芽生えていって、それが許されないことだってこんなに小さな
子どもたちが思わずにはいられないうえに、幸せになれないって思ってしまうこの世界が悲しく思いました。

教室の他の子どもたちの子どもたちらしさも結構リアルで、特にテレビの真似のような喋り方をするところ。ここはメディアの発信の仕方が問われる一面でもあると感じました。

校長と麦野くんがトロンボーンやホルンを吹くシーンがなんだかとても好きです。途中、この音はなにか“怪物の声”だと思っていたので、ハッとしました。(全然関係ないけど、校長の声が「もののけ姫のエボシ様だ……!いい声だ……!」とずっと思っていました。)

最後、ふたりが笑い合って走って行くシーンが理想過ぎて現実かどうかもよくわからなくなってしまいした。でも、色々と想像させてくれる演出がすべて私には刺さった。

描くテーマ的に批判もあるかもしれないけど、その批判を生むこと自体に意味があるかもしれないと思う。わたしはいちはやく映画館で見て良かった。


かいぶつ、だーれだってのを今考えてみると私は、怪物は 「普通」 かな と思います。
ぺれ子

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