怪物のlvsのネタバレレビュー・内容・結末

今年観た映画で一番。邦画の中でなら歴代一番面白かったかもしれない。
前情報一切なしで観始めたので中盤まで完全に舐めていたが、これは間違いなく名作。

うちもまさにこんな感じのシングル家庭だったので、母親から「こんな風になってほしい」という期待と、執着にも似た愛情を強く受ければ受けるほど母親の人間としての弱さがよく見えてしまい、何かあっても全く頼りにできず信頼する事ができなくなってしまうという事がよく分かる。
まあ親なんて特別なライセンスも何も無いただの歳食った人間なわけで、子供も、親と過ごす時間よりも学校で過ごす時間の方が長くなり、そんな中で親子の信頼関係を築いていくというのは本当に難しい話だなとも思うが、それにしても今作の母親の勘の鈍さには物凄くイライラさせられ、前半のシングルマザーパートでは再生したのを後悔し始めるくらいキツかった。本人が悪気のない一生懸命だというのが本当にタチが悪い。

そこから段々と真実が明らかになってゆく様にどんどん見入ってしまったが、真実が明らかになっても、瑛太が面談中に飴食った事だけがずっと解せないでいた。
自分は全く悪くない事実無根の話を、すみませんでしたと頭を下げなければならないというストレスからおかしな行動をしてしまった、非常識な行動をする事がせめてもの抵抗だったと考えると少し納得できたような気がする。

様々なメタファーや叙述トリック、伏線、人間の思惑等が散りばめられていて、同棲愛に悩む少年に対して「白線から出たら地獄」＝既定路線から外れたマイノリティは地獄という発言を無神経に何度もする母親、女の子の読んでいた本や、角田の「今の親なんてモンスター(怪物)」というタイトルをなぞるよう発言等、あげ出したらキリがない。
本当に丁寧によく作り込まれた映画で、同じ映画をすぐにもう一度観たいと思わされたのは久しぶりだった。
最後は悲しい結末だったが、奇妙な事に結末の意味やそれまでの過程等を全く理解できていない人もちょくちょくといるようで、芸術を楽しむためにはある程度の教養が必要なんだなと強く感じさせられた。そういう察しの悪い人達こそ、安藤サクラが演じた母親なのかもしれない。

余談だが、キャストの名前、絶対安藤サクラじゃなくて子供たち二人が一番上だよな。