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怪物のtoriten45のレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
4.5
ラストの映像が記憶に焼き付けられる…。ずーと続いて欲しい理想郷?閉塞な状態から一気に解放される演出がグッとくると同時に、心地よい余韻を残しつつも身の引き締まる気持ちにもさせてくれました。何度も繰り返し鑑賞したい作品となりました。

なんとなく禍々しく感じるジャケ写。大きく『怪物』と書かれた作品タイトルに汚れた顔の子供が2人。不穏な雰囲気は作品の冒頭からも発しています。いじめ?先生による暴力?それともサイコパス?穏やかではない様子が主人公の母親視点を通じて見せられ、そんな展開を連想してしまいます。同じ出来事を別の人視点で見せることで物語の全容が少しづつ明らかになっていく。手の込んだ構成にグイッとと作品に気持ちが引き寄せられました。

世の中はなんて窮屈で息苦しいんだろう。子供にそう感じさせてしまうこんな世界は変えていく必要があります。数多く張られた伏線を謎解きのように語り合うのも楽しいけど、この子供たちが発する悲鳴にも立ち返らねばと改めて感じさせてくれました。

ラストの開放感いっぱいのイメージは、死後の世界ではなく、生まれ変わりでも回想シーンでもなく、大人たちが目指さなければいけない世界をイメージ化したものと私は感じました。LGBTであろうがなかろうがです。単なる理想郷に留めてはいけないですよね。

ただ、スーパーでの足引っ掛けとか、消しゴム拾いの動作停止などの意味深に作られたシーンはちょっと蛇足かな。ここだけ制作側の狙いがわかりませんでした。

それはさておき、ジャケ写の左側の子供、星川くんを演じた柊木陽太は素晴らしいですね。この配役がなかったら作品の印象が変わっていたかもです。
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