このレビューはネタバレを含みます
保護者の目線、先生の目線、校長先生の目線、星川くんの目線、麦野くんの目線、それぞれ描写が丁寧かつ如実に表されていてひとつ恐ろしさを感じる
しかしこれは現実的な現実。
大人からはあくまで大人からの目線しかなく、子どもにとっても子どもの目線しかない。お互いを理解し合うことはとても難しいが、寄り添い理解し合おうという気持ちがなければ前には進めない。そしてもし後退したとしてもいつかは前に辿りつける可能性がある。
映画ではなく、現実にあるひとつの世界観、それぞれが感じている目線の存在が完成されている。
「誰かじゃないと手に入らないものは幸せなんて言わない。誰でも手に入るものを幸せっていうの」
まさかこんないい言葉が出るとは。
友情、親愛、愛情の悲劇。
たったひとつの虐待から生まれた悪循環。勝手に想像した目の前のことではない何かを守る、という何のためにもならない建前が崩壊を重ねていく。そしてそれ以外の何かが失われてしまう。
何を守るべきなのか、何に向き合うべきなのか、考える対象を間違えずに、また間違えても真摯に戻れるように取り組み考えるべきと考えさせられる。