ドーベルマン飯田

怪物のドーベルマン飯田のネタバレレビュー・内容・結末

怪物(2023年製作の映画)
4.8

このレビューはネタバレを含みます

夜中に観て何故か涙が出そうになった。やはり是枝監督の作る映画が好き。人間と怪物は常に紙一重であり、怪物は人間にはなれないが、人間はいつでも怪物になり得るなと。それらは全て感情から生まれる物であり、人は自分が思っている以上に、一部しか見ていないし、その一部だけを過信する生き物。恐らくそれは観ている私達にも通ずる事であり、序盤は皆、湊母の意見に賛同し、学校側に怒りを抱きながら観ていたのではないかと。だが、結局湊の心を救ったのは、湊の幸せを巡って対立した校長先生であった。いつだって誰かにとっての絶望が、誰かにとっての希望である。人は怪物でありながらヒーローでもある。見ず知らずのうちに我々も誰かにとっての怪物になっているのかもしれない。親、教師、子供の三視点で描かれているが、合っているのはもはや時間軸だけであり、真実は人によって異なるものなのだろう。森の秘密基地のシーンでは、自分達を引き裂く大人がいない2人だけの空間がとても美しくて危うくて苦しくなった。立ち入り禁止とされている誰も踏み入らない場所こそが、2人にとっては何も気にせずいられる唯一無二の場所というのが、全てを物語っている気がする。答えなんてない世の中だが、やはり答えに最も近いものとなると、自分の気持ちでしかない。素直に生きてみようと思えた。