私

怪物の私のレビュー・感想・評価

怪物(2023年製作の映画)
3.7
しんどいだろうな、と思って観るのを足踏みしてたけど、予想通りしんどい。
ボタンの掛け違い系が心に1番くるよな。

全員が幸せになる未来が確実に会ったはずなのにそこに辿り着くのは大人でも子供でも等しく難易度が高い。

最初は余白が多い系かなって思ったけど、
様々な人の視点で描いてくれるため答え合わせがしやすい。
なんとなく小説を読んでいる感覚に近く、登場人物の解像度が少しずつ高くなっていき、終盤に進むにつれ共感性も高くなる。

間の取り方や視点の使い方のおかげでリアリティが非常にあり、傍観者としても作品に入り込んでしまう。
必要以上に説明しない会話もすごくよかった。

人間誰しも聖人ではなく、完璧ではない。
言葉や行動の一部を切り取られたり、人それぞれの解釈によって歪みが生まれていく過程は、「人間」が凝縮されていた。

人間の醜悪さをまざまざと見せつけながらも、美しいとも想わせる映画だった。

ラストは各々で解釈が違いそう。
個人的には「死んで生まれ変わった」ではなく、2人のなりたかった自分に「変われた」のではないかと思った。
辛い現実を打破する為には、必ずしも死を経由する必要はないと思っているので、これから2人がなりたかった自分で、やりたかったことを存分に楽しめて幸せに生きて行けたらいいな、と思う。

様々な年代に重たくのしかかる映画なので、観るタイミングは選んだ方がいいのかも。
スカッとしたラストというわけではないので、落ち込んでる時に観るのは良くないかもしれない。
でも、儚さと美しさを感じられる素敵な映画ではあるので、泥水を濾過する過程をじーっと見てたいな、みたいな時に観てみてほしい。
そんな時あるか知らないけど。
私