Jellyfish

すべての夜を思いだすのJellyfishのレビュー・感想・評価

すべての夜を思いだす(2022年製作の映画)
5.0
舞台は、監督自身が子供の頃に住んでいたという多摩ニュータウン。そこに住む (あるいは働く)、世代の異なる三人の女性を中心に五月のある一日を描く群像劇。ニュータウン内ロードムービーの風情もある。

小さなエピソードの積み重ねが愛おしく思えてくる類の作品。「団地映画」というジャンルがあることを他の方のレビューで知ったが、まさに本作は団地が主役でもある。自分自身、団地住まいをしたことは無いのだが、シーンの随所に懐かしさのようなものを感じるのは何故なのだろう。

冒頭の、望遠系レンズを使った長回しのカットからすでに傑作の予感。かと思うと、引きの絵の面白さも本作の特徴で、帰ってから調べたら、撮影はなんと 飯岡幸子。三人の女優のみならず出演者全員のセリフが極めて自然で、神の目視点に徹するカメラワークと合いまってドキュメンタリーを見ているよう。
音響の 黄永昌 はやはり 杉田協士 や 草野なつか 組のスタッフ。冒頭のバンドの音、シーン転換に流れる音楽のカケラのようなもの、梢のざわめき、鳥のさえずり、防災無線の声、土鈴の音、花火の音 などなど。

納得の座組みで、とにかく脚本、カメラ、音響 すべてのレベルが高い。今年のベスト級。俄然 清原惟 監督の過去作を観たくなってきた。

パンフは ¥1800 と高額ながらは小冊子の建て付け。付録の「A Map of Remembering Every Night」は、多摩ニュータウンの地図にロケ地や監督の思い出の場所がコメントともにマッピングされていて実に楽しい。
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