ある一日の三人の女のストーリーが、直接接触することなく紡がれていく。三つのストーリーに共通するのは記憶というテーマだ。ハローワークに通う失業者は知人の記憶に召喚され、ニュータウンを彷徨う。ガス検針員は記憶を失った老人を案内し、見知らぬ人たちの無数のホームムービーを観る。公園でダンスする大学生は、早逝した幼馴染の家を訪ね、幼馴染が撮影した花火の写真を幻視する。
清原監督の過去作『わたしたちの家』も記憶を題材にしていた。ご本人がお好きだというジャック・リヴェットのような謎めいたサスペンスが心地よかった。本作ではそうしたサスペンス感が薄れているのが物足りない。もちろん、そこで勝負はしていないのだろうけど。
東京近郊にあるニュータウンの風景はのっぺりとしている。緑の多いことが救いで、陽光の下で草木が風に靡いている様はなかなかよろしい。なお、都市近郊の住宅地には、縄文時代だけでなく、近世の農村の記憶も留められているはずだ。古の農家の集落の傍らには、道祖神や庚申塚が佇んでいたりする。