【境界線を飛び越えた恋】
"ピクサー"の描く"多様性の描き方"で1番好きな要素が多かった作品だった｡
"火･水･土･風のエレメント(元素)達"が暮らす｢エレメント･シティ｣が舞台で､ここと多様性という所だけ切り取ると､あの｢ズートピア｣を思い浮かべるのだが､本作はそこに"純愛"や"家族それぞれの価値観"の要素を入れてパワーアップしたのが本作なのである｡
"エンバー"と"ウェイド"…この2人は､数々のピクサーのキャラクターの中で一番忘れられない2人になった｡この"境界線や掟を飛び越えた"恋を､しかもそれぞれの属性が抱く価値観を飛び越えて"多様な恋"として描いたのは素晴らしいと感じた｡
そしてこのエンバーの"家族の描き方"…これは監督である"ピーター･ソーン"の家族が､"韓国人の移民"である事から繋がるのだろう｡そしてこのエンバーとその家族は､監督やその家族自身であり､移民である家族ならではの背景を作品に投映した…これを知った瞬間､更に涙が止まらなくなった｡これはいろいろな意味で､現代を生きる私達が観るべき作品で､これは"全世界共通で語れるラブストーリー"であるべきなのだ｡
そしてウェイドとの恋｡決して交わる事が出来ないと思われていた2人が超えた線｡
2人がそっと"手をかざし合う"シーンがあるのだが､この瞬間がとても感動したし､もう2人を引き剥がさないでほしいとも思った｡
まぁその後もいろいろな事が起こり､関係性が危うくなる事も多かったのだが､私はこれを観て､意味合いが違うかもしれないが､ピクサーの短編の｢デイ&ナイト｣を思い出したのだ｡
交わる事のない２つの世界がくっ付くと､"無限に可能性"が広がる事を明示してくれる作品だった｡
そして製作面で言うと､やはり"ビジュアル"｡ピクサーの作品史上､最も"繊細で美しい"ビジュアルなのではないか？
それぞれの属性の"化学的な描き方"もほんと細かくて､観ていて楽しかった｡水の透明度や火とガラスが交わるとできる伸縮性など､ほんとに研究を重ねて作られたのだなと感じた｡
｢ソウルフル･ワールド｣に続いて好きなピクサー作品かもしれないものに出会った｡
まさに今の時代を生きる若者に見てほしい一作だし､特に自分の"生きる道に迷っている"人に見てほしい一作だなと感じた｡
またとんでもない作品を作り上げたなと感じた作品でした｡
