こーひー

マイ・エレメントのこーひーのネタバレレビュー・内容・結末

マイ・エレメント(2023年製作の映画)
2.3

このレビューはネタバレを含みます

火と水が恋に落ちたら…?という昨今のピクサーらしい作品

びっくりするくらい刺さらなかった

いや水道局は何やってんだよ、ウェイドとエンバーに任せないでお前らが何とかしなきゃだろってツッコミたくなる
予告で街を救う話だと思ってたら、自分たちの店だけで意外と規模小さくてがっかり…
あと二人が心惹かれ合う明確なキッカケがなくて、モヤモヤした

火であるがゆえに感じる肩身の狭さというか街の施設利用においての不便さや火に対する偏見差別がエンバーとウェイドが結ばれることでなくなるわけでもない。
恋愛映画を撮りたかったという熱意は伝わったが、響くことはなかった

良かった点としては火の最大の敬意である土下座(?)を父親に最後にするという伏線回収
そして、空気たちが乗る飛行船は乗客自身が飛行船を飛ばす空気になるという発想がおもしろかった

火と水という相容れない関係性を描く上で二人の間には触れ合いないという障壁があった。
劇中、水に濡れた火は消えてしまい、火に近づいた水は沸騰するとされている。それを描いた上でエンバーとウェイドが触れ合うシーンでエンバーの手が近づくとウェイドの手は沸騰し始める。しかしウェイドに触れることでエンバーにはなんら影響がなかった。それはなぜなのか。「愛の力」の一言で終わらせるにはあまりにも脚本が雑というかご都合主義な部分がどうしても否めない。
だが、それはウェイドがエンバーに愛情を持っていたからエンバーが消えないようになった(した)のか。一方エンバーには店の跡継ぎや周りからの白い視線という、ウェイドを本気で好きになれない理由があった。それゆえにエンバーはウェイドを沸騰させてしまったのか。つまりウェイドの沸騰はエンバーの心の乱れ、葛藤から沸き起こったことなのか。 
この解釈が正しいかわからないが、もしそうなのだとしたら愛情さえあれば火と水は触れ合えるようになるということになる。だが、やはりそうだとしても火と水の性質を考慮するとあまりにも取って付けたような展開のように思えてしまう。

また土と風の存在を上手く描けていない。正直なところ土も風もいなくても物語としては成立してしまう。風のゲイルが空気玉を作って多少役には立つがそれ以外はただの飾りである。エンバーに片思いの土の少年クロッドも物語に直接関わるわけではない。
火と水に観客の意識を集中させたい気持ちはわかるが『ズートピア』のようなあらゆる種類の者たちを巻き込んだやり方にはできていないのが惜しい。

そういえば結局ダムはどうなったん?ほったらかしで終わったよね?

総評
火と水であるがゆえに触れ合えないというもどかしさをエンバーとウェイドの切ない表情やセリフなどで、とても上手に表現できていると思ったからこそ、「試しに触れ合ってみたらなんか触れました」って感じで終わらせてしまった展開に興ざめした。触れ合えないという壁をいかに取り除くか。その壁を取り除くための奮闘を描けばおもしろいものになったのではないか。その奮闘の中で何かしらの脅威(ヴィラン)と戦い、その過程の中で愛を育み、愛する者たちを守り、すべてのエレメンタルが幸せに暮らせる街になりましためでたしめでたしでよかったのではないだろうか。
少し前までのピクサーならそうしたかもしれない。
脚本がとてもチープに感じた。
こーひー

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