michiko

マイ・エレメントのmichikoのレビュー・感想・評価

マイ・エレメント(2023年製作の映画)
2.5
ピクサーの長編27作目。様々な擬人化を行なってきたピクサーの新作はエレメントがテーマ。火と水の相反するエレメントの恋愛模様から移民問題、人種差別などを盛り込んだ社会派の内容となる。

キャラクターデザインの好み、ありきたりな擬人化から懸念は感じていたものの公開後の評価が高かった為、期待値は非常に高かった。しかしピクサー作品としてはもう一歩の詰めの甘さを感じた。

移民問題といった社会性は裏テーマというよりはもう前面に出過ぎている。そしてそれが解決したかというとあまりにもミニマムな規模であり、確かにこの家族間の間では差別は無くなったかもしれないが世間への影響は何も感じられなかった。どちらかというと移民1世の犠牲とそれに責任感を感じる2世の問題に置き換わっており、何がどう解決したのかいまいち納得感が少なかった。なぜ火と水が抱き合ってもお互い無傷なのか。実は恐れる程のものではなかったのか。もしそうなのであれば数々の危機を乗り越えた価値が削がれるだろう。

また四元素が生活するエレメントシティのディティールが乏しくピクサーらしさが感じ取れなかった。そこら中水で溢れかえっており火にとっては即死トラップが生活のすぐ横にある。木と火が同じ電車に乗り、少し触れると木も焼死である。そんな四元素の相反する能力が時にはコメディとして描かれ、時には死に値する危機として描かれ、その余りにも危機感の無さに観客は混乱する。水のエレメントにとって海とは何なのか、火にとって青い炎とは何なのか、そういった擬人化に対しての究極の追求というピクサーが得意とする部分は結局描かれることはなかった。
また本作最大の危機として描かれる洪水も、なぜこれ程の問題を街の危機として事前に回避出来なかったのか(しようとしなかったのか)謎。火が水を嫌う理由も余りにも描けていない。人々や街全体が幼いのである。

本作に真に感情移入するには移民二世という我々にとってなかなか理解が難しい問題に対して、もっと深い知見が必要なのかもしれない。
michiko

michiko