真一

マイ・エレメントの真一のレビュー・感想・評価

マイ・エレメント(2023年製作の映画)
3.2
 民族差別💣️とは何か。どう克服すべきかー。この難題に正面から取り組んだファンタジー作品🏰。視聴者に現実の問題をなるべく連想させないよう「火、水、土、風」というエレメント(元素)を人格化し、共存に四苦八苦する物語🎬️にした点に工夫を感じました。ただ、あまりにもファンタジー化しすぎたせいで、民族差別は負の歴史⚔️🩸⚔️に起因する構造問題だという死活的に重要な視点が欠けてしまったと感じます。この点が惜しいです。

 舞台は、様々な元素(民族)がひしめき合う「エレメント・シティー」。この国際都市🏙️に、新天地を求める「火の民」🔥の移民家族が流れ込んできた。主人公のエンバーは、決して裕福ではないこのエスニック食品店一家🍖の、癇癪持ちの娘👩だ。

 このエンバーの前に、エレメント・シティー🏙️の上流階級に属する「水の民」🌊の若者ウェイド👨が現れる。火🔥と水🌊という最悪の民族的相性の二人。「水の民」の不理解と偏見に何度となく怒りをぶちまけるエンバー👩だが、ウェイド👨の誠実な降るまいに徐々に心を開いていくというストーリー🎬️だ。

 注目すべきは、登場人物👤が軽度の差別発言を口にするシーンだ。ウェイドの両親👥が、共通語を母国語とするエンバーに対し「共通語がお上手ね」と言った場面が印象的だった。「火の民」🔥の移民は共通語を話せないと思い込んでいる水の民。その様子をみて、エンバー👩は顔を曇らせる。

 これはまさに、私たち日本社会🇯🇵が抱えている問題ではないか。ご両親のいずれかが欧米系だったり、アフリカ系だったりする方と言葉を交わす際、つい外国人だと思い込み「日本語がお上手ですね」と言いがちな私たち。暗い顔をしながら「私、日本語しか話せないんですけど」と答える相手。マイクロ・アグレっションと言われる、こうした無意識の差別発言を本作品は取り上げ、警鐘を鳴らしている。

 ただ、超富裕層である「水の民」🌊のウェイド一家が、低所得層である「火の民」🔥のエンバー👩に憧れの職を斡旋するラストをハッピーエンドとした締めくくり方には、疑問を感じた。水の民🌊が裕福なのは、異民族である火の民🔥を抑圧し、搾取した歴史があったとしか考えられないからだ。そうした描写はないが、それ以外に合理的な説明が付かない。

 水の民🌊の目は欧米人のように青く、毛髪はカーリーだ。火の民🔥は目が切れ長で、メッカに向かって礼拝するような仕草を取るため、アラブ人を彷彿とさせる。そう考えると本作品は、元素を擬人化したにもかかわらず「欧米人からみて理想的な欧米文明とアラブ文明の和解」を描いたようにも見える。そうであれば、アラブの人たちはこれをみて釈然としないのではないだろうか。

 もっとも、本作品🎥が意欲作であるのは間違いなありません。見る人によって、さまざまな評価が成り立つ一本🎬️だと思います。
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