はなればなれのマチルダ

破局のはなればなれのマチルダのレビュー・感想・評価

破局(1961年製作の映画)
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【ピエール・エテックス レトロスペクティブ】

RÉTROSPECTIVE PIERRE ÉTAIX in THEATER IMAGE FORUM

今月中頃、シアター・イメージフォーラムにて開催されていた、〈特集上映:ピエール・エテックス レトロスペクティブ〉へ行って参りました。

私が本特集上映で鑑賞したのは、
・『破局』(1961)

・『恋する男』(1962)

・『幸福な結婚記念日』(1962)

・『大恋愛』(1969)
でした。


私が最も気に入った作品は、彼の監督デビュー作『破局(RUPTURE)』(1961)でした。
12分間の短編で、タチを介して出会ったエテックスとカリエールによる作品です。

ストーリーを大まかにご説明いたしますと、

ある日、男は恋人から別れを告げる手紙を受け取りました。するとその中には、真っ二つに引き裂かれた自分の写真が入っているではありませんか。「そっちがその気ならこっちもその気だ」と言わんばかりに、返信の手紙を書こうとする男でしたが、PTAの『マグノリア』の空から降ってくるカエルばりに、あれやこれやと大量の小さな障害にぶち当たります。
そして極め付けはラストシーン。あっさりと、ロメール映画に出てくる細身のデニムを履いた男達のように本当にあっさりと、窓枠から消え去ります。


私はこれに、なんだか心を軽くしてもらった気がします。
小さな落とし穴に、一つも漏らすことなくズブズブとハマっていく男の姿に、私たちは「ふふっ」と笑ってしまいます。人が笑えるぐらいの小さな不幸の連鎖。しかし、そんな作品の終末には”死”がありました。


"死"とは、生きとし生けるものにとって何よりも大切なものなのかも知れません。しかし、私たちは今生きています。

大切なのは、"死"を避けることでは無く、"生"を歩むことなのではないでしょうか。物事を、どんな時も深くシリアスに考えなくたっていいではありませんか。

ただ面白ければいい。ただ人生を楽しめばいい。
エテックスの映画が、そう言っているように感じられました。