春雪

みなに幸あれの春雪のネタバレレビュー・内容・結末

みなに幸あれ(2023年製作の映画)
1.0

このレビューはネタバレを含みます

私は手順のはっきりした儀式が好きだ。
その手順を誤ったら大変なことに…とか、手順の隙をついて一発逆転、とかが好きだ。そのためにも、儀式の手順は明確にしておいてほしいのだ。

この映画内の「家族が幸せになるための儀式」だが、色々と疑問点がある。

•生贄による恩恵の対象範囲
→血が繋がっていれば幸せの対象範囲であるならば、一人暮らししている伯母も本家にいる生贄の恩恵を受けられるはず。
なんとなく、男系家族のみ恩恵を受けて家を出た、嫁いだ女性は対象外な気がするけどね。
婚活するときの条件として「生贄がいる家の長男」とかが人気でそうな世界ですね。
マッチングアプリのプロフィールに「2階に2人います🩷」とか書いたりね。

•生贄の条件
①年齢
→近所の高齢女性が「私は年寄りだから力になれない」と言っていたので年齢制限あるのかな?と思っていたが、生贄を捕まえるために手伝うことができないということかな?
②生死問わずなのか
→家にいた生贄が轢死してから家族に症状が出始めたので、生贄が生きていることが条件かと思ったが、伯母の家にいる生贄はミイラ化しており明らかに死んでいるにもかかわらず伯母に症状はでなかった。
③性別
→これは重要ではなさそうだが、登場した生贄候補は皆男性だった。
近所の高齢女性が「あなた可愛いんだから町に行って捕まえてきなさい」と言っていたので、この家では性的な魅力を餌にして独身者を代々捕まえてきているのかな?

という儀式関連の雑さにモヤモヤしていたのだが、
儀式に正しい手順などなく、ただ自分が生贄よりも見に見える形で幸せだと思える悲惨な状態を作り出せれば良いのだろうか。
だとすれば、生贄の生死というよりも、解放された生贄が天気の良い空を見上げて喜びの表情で歩き始めた瞬間に「あ、こいつ幸せになっちゃった」と感じて症状が現れ始めたのであれば納得。

この世界では一家にひとり生贄がいて2階に住まわせているという設定のようで、自分より不幸な人間を無理やり作って幸せを保っているみたいだけれど、それで世界がうまく行っている世界というのは些か乱暴だなと感じる。

「幸せ」という感じ方に個人差がある世界では、自己犠牲によって幸せを感じる人間もおそらくでてくるし、そうなると生贄の方が幸せを感じているという事態も発生すると思う。
新しい生贄の青年が生贄になった動機として、父親が死んでこの世界に絶望しきったということのほかに、主人公への自己犠牲的な愛が幾分か含まれているだろう。
今後寿命を迎えるまで、地獄を見て後悔する日もあるだろうが、主人公のために犠牲になっている自分に幸せを感じる瞬間もあるだろう。
それを彼女がもし感じ取れば彼女は吐血するのではないだろうか。


という感じで、言わんとしてることは伝わるけどなんか色々つっこみたくなる感じ。

私は幸せに限りがあると思っていない、
自分より不幸な人がいない状態がマイナスだと思わない
人と比べて落ち込んだり、羨ましく思ったりはするかもしれないが、少なくとも人の不幸を感じないと気持ちがマイナスになるということはないので、そもそものテーマに対して
「そう感じる人の思想が極まった世界なんだね、ふーん」という感じだ。

そのほか
•メインテーマパートと無気味演出パートが乖離してて(おばあちゃんの無限歩行とか)ちょっと冷める。
•家族の皆さん、症状が出始めているのに必死さが感じられない。ギリギリまで娘にばかり早く次を見つけてきなさいよーと口だけ急かしてのんびりご飯食べてる。
もしかしてあの症状って「笑い」がでて終わり?そんなに深刻じゃないのかな?という謎。

•舞台が因習のある村かと思いきや、村人団結で儀式を行うとかそういうものはなくて、あくまで家のことはその家の家族でやるもんだ、という線引きがあり、現代的だなと思った。

•伯母さんのパート、「理想的な生活をしているように見える伯母」みたいな場面が見てみたかった。いきなり狂気を見せすぎる。
春雪

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