逃げ出すことで心の拠り所を求めようとする姿から、知らず知らずのうちに逃げていた何かに向き合おうとしていく微妙な変化を感じ取らせる演技・演出には非常に心打たれました。ちょっとした表情でその心情や状況に説得力を持たせる辺りは、さすが力のある役者さん達だなという感じでした。聴覚障害のあるキャラクターに実際に聴覚に障害のある役者さんを起用したりなど、とにかく役者陣の盤石さが作品にとんでもない安定感をもたらしていたように思いました。明日は我が身とも思えてしまうあまりにリアルな一家の様子は、現実に怯える人々がバタバタする悲喜劇であるからこそ、どこかクスッと笑えてしまうのかもしれないなという気がしました。
