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せかいのおきくのビリーのレビュー・感想・評価

せかいのおきく(2023年製作の映画)
3.7
現代において白黒の時代物を撮る/観る意義を考えながら観ていた。主人公の弥助や忠次があまりに現代の声をしているが、台詞はおそらく時代物的な大雑把さ(たとえば、説明台詞の多さや感情の飛躍が特徴的だと思う)を含んでいる。この差異が矛盾に感じられた。思うに昔の白黒フィルムで撮られた時代物は、製作された当時はまだ比較的江戸時代の生活に対する近さがあったこと、それから技術的な限界によって隠されるものが多かったことが、そのフィクションを信じさせる力を生み出していたのだろう。いまは色々見えすぎてしまう。そのなかで石橋蓮司の演技はとても良かった。老いた体に溜まっている疲労や経験や感情が思いがけず出てしまうように台詞や身振りが置かれていた。『20世紀少年』のころからだいぶ年が経ったのだな……。
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