阪本順治監督30作目にして初のオリジナル時代劇。ロッテルダム映画祭でプレミアされた。
タイトルを『せかいのきおく』だと勘違いしていた…だから壮大な話なのかな〜と思ってたらうんこの話だった。
厠からクソを買い取って農業用肥料として売る男たちの話なので全編クソだらけ。なるほどこれは確かにカラーだとエグいことになるかも。
どうも阪本順治とは合わない(『KT』は例外)のだけど、思いの外面白かった。短いのもあるけどかなり夢中で画面に釘付けになった。
最初はギャグセンスがやっぱり合わないなーと思っていたんだけど、物語が進むにつれて、その笑いの裏にある感情が浮き出てきて上手いなと思えてきた。
例えば池松壮亮演じる矢亮の発するオヤジギャグが終盤では別の意味を持って響いてきたり、佐藤浩市演じるおきくの父が武士としての死の前に言う哀しいユーモアだったり。
そうした脚本もそうだけど、阪本順治らしい撮影の工夫がみられ、カラーとの切り替えも上手い。あれだけ全編クソまみれなのに美しいと感じることができるのスゴい。
武士のしきたりが残りつつも、身分差や偏見のない「せかい」への希望がみえる江戸末期という時代を捉えた秀作。