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日の丸~寺山修司40年目の挑発~のsayaquiのレビュー・感想・評価

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映画を見ながら自分に問うてみて、答えられない質問がけっこう多かった。理由は、自分の外側で自分をも含むと認識できる領域がたぶん国ではないからで、じゃあそれはどこかと言えばきっと街だなと思う。国に属している意識はあまりないけど、街の一員だという意識はある。もっと平たく言えば、自分は日本人であるという意識はあまりない。自明のことすぎて改めて考えたことはなかった。○○に住んでる僕、彼、彼女ということはよく考えるけど、○人ということは自分の中にはないレベルという感じ。
同世代の人はどういう感触なんだろう。もし自分と同じように感じる人が多いのなら、良くも悪くも国一丸で外部と戦った意識がまだ残っている世代にしかあの例の質問にはっきり答えることはみんなできないのかも。
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質問は無機質でも、映画の構成自体は人間味があってホッとする部分が多かった。人間味、もっと言えば監督の配慮と言えばいいのだろうか。例えば、成人式の女の子2人に質問を投げた後で自分の身分を明かすシーン。他の解答者にもきっと最後に身分は明かしていたのだろうけど、そのシーンはそれまで全部カットされていて、そこでやっとそのシーンが入る。女の子は果敢に質問に答えていて、監督が身分を明かして(女の子は相手の目的が分かって)肩の力が抜けていくように見えた。そういう部分が、後半でも触れられていた「解答の内容より答えるまでの間に意味がある」って話に繋がってくるのだと思う。後半は特に寺山修司の表現に関わってくる話で、ここの部分もう一回見たいなと思った。

【追記】
他の方のレビューを見ていると、最後に質問者に逆に答えさせないのは不公平だ、という意見を見つけた。僕はそれ入らなくてよかったなと思う。それしちゃったらドキュメンタリーじゃなくなる気がするし、この映画の受け取り方、受け取る層を限定させてしまう気がするから。白黒ハッキリしたものに慣れている人には、こういう終わり方には少し物足りないのかもしれない。
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