もた

君たちはどう生きるかのもたのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

吉野源三郎の原作(?)も読んで楽しみにしてた。凄すぎる。やべえ。おそらくはその本ですら宮崎駿の宇宙の中のひとつの星の輝きに過ぎないのだろうけど、でもそれとの繋がりってなんだ。中流家庭で育ったコペル君は学校を通してその上下の暮らしに触れることになる。しかし眞人の視点では学校という場所から見えるものがあまりに希薄(無音)で、皆が坊主頭で田植えを手伝っているような画一化された世界だし、彼だけが都会の裕福な家庭の息子で孤立している(疎開先の学校だから当然だけど)。トトロでも耳すまでも主人公のまわりで学校は生き生きとしていたから、それをいくらでも踏襲できそうな今作の描写があまりに無味乾燥なものだったのが意外に感じた。あるいは本における学校がもっと大きな社会の比喩と解釈すれば塔を通して上下の世界をたどる冒険と見ることもできるけど、そこは死後と生前という形而上学的世界だから、単純な社会を当てはめるのは難しい気もする。隔絶された場所で道徳は不要だと思うし。ただ、生死の世界が俗世と繋がる部分があって、それが戦争なのでは、とは思った。眞人が受ける感銘は何だったかというと、喧嘩をめぐる勇気と悪意の間の葛藤というのがシンプルな解釈だと思うけど(読んでいたページがどこかおそらく特定できるけど……)、そこは戦争と呼応していると思うし、宮崎駿が何度も描いてきた美しさと残酷さという争いの両義性に繋がる部分だと思う。
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