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君たちはどう生きるかのYKのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

これまでの作り方とはまったく異なるところがいくつかあった。「これまで」というのは、宮崎駿がジブリで制作した長編作品のことで、短編や漫画なんかではすでに行われていたことでもある。異なる点①作画のバリエーション。冒頭の火事のシーンは線の勢いや揺れをかなり生かしているし、主人公が義母と対峙するシーンでは、義母の髪の毛が一本一本繊細に描かれている。原画マンか作画監督のそれぞれの持ち味を生かしているようにも見えるし、作品通して必ずしも線を統一しないという意志にも見える。異なる点②モノローグや説明セリフが多い。今回はこれまで以上に宮崎駿の描きたいシーン、盛り込みたいエピソードを取り入れている感が強く、つじつま合わせやストーリーの繋ぎ目を端折っている。それは次の点にも共通する。異なる点③場面転換は突然に。シーンとシーンは自由自在に、唐突に移動する。これは小説、特に児童文学なんかで多いが、映像作品にする際に普通はつじつま合わせが必要になる箇所をあえて描いていない。特に後半のシーンでそれが多く、前半で階段の上り下りや廊下での移動、ドアの開け閉めなどの所作が丁寧に描かれていたので、余計にそう感じたりした。異なる点④主題歌が男性。宮崎駿はかねてより少年が主人公の映画を作らなければとかなんとか言っており、風立ちぬで一度実現はしたものの、本作はより正直に、自分の経験も織り交ぜながら少年の心を描き出したと思う。そのうえで、主題歌を付けるとすれば、やっぱり男性の声でということになったんだと思う。米津玄師にしたという判断も納得はできる。

いままでだったら「もっとお客さんにわかりやすく」とか「万人が楽しめるように」とか言って作るのが商業作品としてのやり方だったと思うが、今回はそれを極限まで無くして、ジブリというよりは宮崎駿そのものに近い作品を見ることができて嬉しかった。し、それを許した鈴木Pもナイスだったと思う。個人的には、冒頭の主人公のバタバタ走る動きだけで満足感がすごかった。
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