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君たちはどう生きるかのあのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
2.5

このレビューはネタバレを含みます

これは金ローでよいかも...?

血統によって受け継がれる塔、盲目的に群がる攻撃的なインコたちとそれらを束ねる強そうに見えるリーダーインコ、そして戦時中という舞台設定からは、あまり深く考えなくても国の統帥者たる天皇と、首相、そして右ならえの国民たちの姿が浮かんできます。そしてその愚かな秩序を捨て、真っさらなところから歩き出すラストで終戦を持ってくるあたり、宮崎監督の大政翼賛体制や、昨今の保守的な政治傾向への批判的な視点はおおよそ見えてきましたし、それになんとなくもののけ姫的な締まり方をしていました。

しかし問題はそんなことではありません。これは監督の年齢も考えると仕方ないことかも知れませんが、あのドキドキ感はどこへ行ったのでしょうか?遅すぎる滑り出し、空想的ではあるが、ディティールが欠落しているためかやたら狭く見える下の世界、難解なストーリーテリングな割に、ヒミが母だと割とすぐに気づいてしまえるような、思いもよらない単純で説明的な描写...。戦争で産まれなかった子供たちや、実母の確かめたわけではない死など、面白くなりそうで身構えていた要素が何も回収されずに終わったのは、流石に...。正直初っ端の空襲シーンの、熱でうねる空気と人の影の描写がピークでした。

また、ちょっと久石さんも本調子じゃなかったのかな...?と思いました...。音楽制作で別の方々の名前が上がってましたので、久石さんが作曲を担当したわけではないかもしれませんが。それと、ラストは本当に米津玄師で良かったのか...?

最も残念だったのは、主題歌しかり声優しかり、結局有名どころに頼っていたところです。宮崎監督の実績や信頼を頼りに公開前の情報を制限した割に、単なる企業のマーケティングの範疇に作品自体が収まってしまっているようだったのには流石にげんなりしました。これが宮崎監督の遺作になってしまうならば、少し残念です。
あ