TakayukiMonji

君たちはどう生きるかのTakayukiMonjiのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

公開初日に鑑賞。

「風立ちぬ」公開時に発売されたCUTの”宮崎駿はなぜ、はじめて自分の映画で泣いたのか“の3万字インタビューを読んで臨んだ。10年前の当時はもうファンタジーはやらない、と言っていたけれど、この10年での心境の変化があったのだろう。“(主人公が)自分自身のルーツと向き合う”ゴリゴリのファンタジー作品に仕上がっていた。紛れもない宮崎駿作品だなぁと思った。

このプロットは、個人的にはセリーヌ・シアマの「秘密の森の、その向こう」に似てるなと思った。小さかった母と対峙して、自身の存在を確認するところが。
異世界に迷い込む流れは「千と千尋の神隠し」であったし、冒頭の火事のシーンは「風立ちぬ」の昭和の空気感、アオサギも主人公もジブリのセルフオマージュを感じた。

肝心の物語は難解。吉野源三郎の小説を復習して臨んだけれども、あくまで”着想”としての位置付けなのか。完全なオリジナルストーリーだったけど、母が息子に託したこの小説を読んで眞人は涙して、そして地下世界で幼少期(?)なのかパラレルワールド(?)なのかの母と再会することで、これからの人生の意味や生き方について、メッセージを受け取る。だから多くは語られないけれど、とても重要な起点になっている。特に、地下世界から、人間になろうと上がっていくフワフワのやつとか、積み木のシーンは印象的で、これは吉野源三郎とも通ずるメッセージを感じた。
人間はみな、この世の中のひとつひとつの分子であり、それぞれが社会を構成しているのだという部分や、自分が正しく生きたいと思っているからこそ人は悩み苦しむのであり、真理を理解しようと芯を持たない人は苦しまないのであるという部分も。
実母との対峙の中で、叔母を「かあさん」呼ぶところ。ここに眞人の優しさと正直さが表れていた。君はそう生きるのか、と。

やはり宮崎駿はファンタジー作家。リアルな戦時中の原風景も素晴らしいし、火事のシーンの迫力と恐怖もすごかったけど、一気に空想世界に入り込んだあとの世界観の作り込みは唯一無二だし、建物の空間も時空の設定も面白かった。意味わからないことも多いけど笑。
現代社会の時代性を反映するよりも、より人間の真理と向き合うような作品。わけわからないところも含めて、テレビの放送とかで何度も見直していくのがジブリなんだよな。年齢を重ねると見え方も変わるだろう。また観る。


あと、あえて書くけど、シン・ウルトラマンでも書いたけど、エンディングの米津が流れた瞬間に急に令和感が出て興醒めしてしまうので、もうちょっとあったんじゃないかな。
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