このレビューはネタバレを含みます
今まで宮崎駿作品に触れていてこの作品に惹かれる体験そのものがプロモーションになっている。
監督が作り続けたもの全てを賭けての「君たちはどう生きるか」という問いかけ。
過去作のオマージュが集大成のための完全なピースになっていて少しもチープじゃなく、デジャヴのように繰り返し出会うシーンから生きた楽しさを得られる。思い出のアルバムを捲る感覚。
地獄のような世界に種で分断されているような鳥が沢山。まさに烏合の衆。ピーチクパーチクと囃し立てる事やずんぐり肥えてもなお貪欲すぎる面の中にも、自由に飛ぶ事を忘れてしまった姿や初めて見る自然に目を輝かす様子が哀愁漂わせている。
現代の感覚でいうと一見不義理かもしれないが、戦中豊かな暮らしができる父親が妻の亡き後にその妹を抱えるのは寄り合って生き抜くためにもあり得る話で、子どもの事を考えても全くの他人を後妻にするより可愛がってもらえるだろう事や血の繋がりがある兄弟を持てると考えての成り行きでは。実際父親は責任感が激しく強そうなシーンが多かった。
いつも諦めたような顔をして本当の気持ちは簡単に口にできないが内に秘めた想いや優しさがある子ども…
世界をやり直すチャンスを急ごしらえで不均衡にし一振りで破壊する王様…
年老いた人を抱えつつも若者はその老婆心に守られている部分がある…
焼け落ちると分かっていても生まれてくる命のために躊躇わず戻れる母。
観終わって作品の全体像を考えてからその後で涙腺にきた。
これから先の時代にある恐ろしい事を人はどう生き抜いていくんだろう。
エンドロールの青色を眺めているあいだ心の中に在るジブリの存在感に気付かされるようだった。
