さな

君たちはどう生きるかのさなのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

正直、観た直後に、主人公が塔から得たものはなんだったのか一回観ただけではわからないなぁと思ってしまった。長年ジブリ作品に触れていなかったのが原因かもしれないが…

感想や考察を見漁る限り、空想と現実に向き合う話、そして悪意についての話だということがなんとなく分かってきたが、私はインコやペリカン、積み木がすごく象徴的だなと思ったので、それらに言及したい。

大叔父が創った世界では、インコやペリカンは他の生物よりも力を持ち、脅威である存在としての地位を築いている。そんな彼らも、扉から現実世界へ一度飛び出してみれば、そこに上位の存在としての知性も底知れない欲望もなく、フンを撒き散らして支配欲も無くただ飛ぶ無為の存在になる。なんだかすごく、滑稽に感じた。
これは、人間へのメッセージなのではないか。
人間も、我々が生きるこの世界では他の生物にとって脅威であり、生態系を脅かす存在である。欲望に目が眩み、潤うことのない渇きのために行動する。
そんな我々も「他の世界」に行ってしまえば他の生物にとって小さな存在になる。生存に必要のない知能を失い、理性もなくなる。
そう思うと、人間の事情だけで争ったり他の生物を一方的に傷つけたりすることがすごくつまらないことだということがよくわかるというか(上手く言えないが)、人間も所詮生物で、滑稽な存在なのだと思った。

積み木については、ちょっと触れただけで崩れてしまいそうな積み方にして、しかもそのギリギリのバランスに、わざわざ衝撃を与えて「大丈夫かな…?」と試しているのが、神様のいたずらのようなものを感じた。
でも社会はきっとそういう不安定なものの積み重ねで、非常に繊細なバランスの中で構成されてきたもので、ちょっと衝撃があると簡単にグラグラと大きく揺れるものだと思うと、なんだか納得できる。
崩れる心配のない積み木は楽しくないんだろうなぁ。

明日でも、数年後でも、何回か観て自分はこう解釈する(=こう生きる)と言語化できるようになりたい。
さな

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