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君たちはどう生きるかのAPlaceInTheSunのレビュー・感想・評価

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.4
7月14日、公開初日の初回、とまではいかなかったが、2回目の11:40~の回を鑑賞。
平日の昼間なのに8割くらい客席が埋まっている。

まずスタジオジブリ作品との親密感について書き記しておくと、自分はスタジオジブリの熱心なファンではない。恥ずかしながらジブリの作品の中でも、未見の作品が幾つかある。
小学校の授業で(おそらく一般劇場公開からそんなに日が経たない時期に)「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」を体育館で鑑賞した。
大阪府にある普通の公立小学校だったのだけど、全国の他の小学校でもこういう風に生徒に鑑賞させたりしてたのだろうか?? 「ラピュタ」や「トトロ」以外にも「はだしのゲン」や「ドン松五郎シリーズ」(これは実写)や他にもたくさん授業で映画を見させてくれる小学校だった。
小学生の自分にとって当たり前の事と受け入れていたが、いま考えると幸運だったと思う。
どの作品も、上映後は、生徒皆が、楽しかったとか怖かったとかワチャワチャ言い合っていたが、やはり「ラピュタ」「トトロ」は一際、盛り上がったと記憶している。
後々、スタジオジブリが国民的アニメーション制作会社になり世界トップクラスの評価を得る作品をたくさん生み出すことになるとは予想もつかなかった。

個人的には、子供の頃に「おもひでぽろぽろ」を見て、他のアニメ作品にない所謂「大人の鑑賞に耐えうる」テーマ性を含んでいると感じて以降、高畑勲さんの作品の方を好んで鑑賞してきた。なかでも、大人になってから劇場鑑賞した「かぐや姫の物語」が絵柄・批評性ともに圧巻だった。ああいう、≪古典を現代的視点で語りなおす≫作品自体が大好きだ。

宮崎駿監督作品では、ほぼ同時期くらい?に観た「風立ちぬ」が一番気に入っています。

宮崎駿監督の新作が「君たちはどう生きるか」というタイトルで、吉野源三郎さんの同名小説を原作とした作品だ、という情報が洩れ聞こえてきてから、原作も読んでみた。
そのタイトルどおり、教条的で説教臭くもあるが、子供が読むにはぴったりで、道徳や排他的精神より、金欲や利己的な価値観が優先される現代に必要とされる書物だと感じた。当時、ヒットした小説らしく宮崎駿も少年時代に読んで感銘を受けたという。
この本を宮崎駿が、どのように料理するのかが、とても気になった。
期待していた理由のもう一つは、ポスターの絵。
「君たちはどう生きるか」は、「SLUM DUNK the First」の成功を受けて、一切の作品関連情報や宣伝を配した戦略をとった。たった一枚のポスターを除いて。
このポスターに描かれた鳥の絵に魅了された。



さて、ようやく「君たちはどう生きるか」の感想に移る。

※※※ 以下ネタバレあり ※※※

空襲警報に飛び起きて階段を駆け上がる少年のシーンで始まる。この時代設定と主人公が少年の点で、「風立ちぬ」っぽい好みの作風きたぁー。と興奮しきり。
空襲により、少年のお母さんが入院する病院が焼けていると、誰かが叫ぶ。
少年は居ても経ってもいられず、空襲によりパニックに陥った夜の街を駆けて病院へ向かう。やがて、主人公の顔や、逃げ惑う街の人々の顔が、それまでの≪ジブリ的≫絵柄から、グロテスクな、抽象画のように形をとどめず溶けだしたようなものになっていく。戦争による本土空襲で焼け出された町は地獄で、本作に一貫して充満する≪死の匂い≫がここでまず示される。
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