このレビューはネタバレを含みます
忽然と姿を消した叔母を探していた眞人は、喋る青鷺に導かれ不思議な世界に迷い込んでしまう！
あの巨匠宮﨑駿が描く異世界転移物！
『異世界に転移したら母が美少女チート炎能力者になってペリカンを焼いてた件』
ってな感じの話でも無くはない。
ジブリは金ローで気が向いたら見るぐらいで劇場で見たことはない。
事前宣伝皆無ということで、宮崎駿の最新作が前情報一才無しで見られるという映画ギャンブルが楽しめる、恐らく人生で唯一の機会を逃すまいと、なるべく情報を入れず急ぎ足で視聴。
タイトルから説教臭い現代劇かと思いきや、蓋を開ければアリスインワンダーランド。
この作品は「面白い！」という話では無い。
なんというか、世界でトップクラスの妄想癖の人間の空想をそのまま超絶技巧で具現化した記録映像といった感じ。
すでに長編アニメーションから引退した宮﨑駿が趣味で作った自主制作映画と嘯くだけあり、非常に優しく無い、大衆にわかりやーすく作られたエンタメとは一線を画した仕上がりになっている。
例えば、転校先のクラスメイトとのいざこざの後に、眞人が誰も見ていない所で石で自分の頭を自傷するという、中学校の国語の問題くらいには難解なシーンがある。この行為は作品の根幹に関わる行動なのだが、その真意は語られず「悪い心がある証」としか説明されない。「優しく無いなー」とニヤニヤした。
時代に迎合して全部説明しきった庵野秀明への意趣返しとも取れるぐらい説明がない。
眞人の自傷の理由を自分は
"怪我を盛るとこで、大人を使った報復をしつつ、学校もサボれる一石二鳥なソリューション"
と解釈したのだけど、[眞人 自傷]で調べると意外と解釈が分かれていることに驚いた。
異世界の理や常識に翻弄される感じは好き。
ワラワラが人の子になるのに対し「当たり前だろ」と一蹴される所とか。
ストーリーはそんな感じだが、映像は本当凄い。2Dアニメーションの歴史における最高到達点。
絵による細かい演技は流石としか言いようがない。建て付けの悪い窓の質感、ズボンを履く所作、鳥の飛行する様、コミカルな車の動き、すげー所が多すぎて枚挙にいとまがない。年齢的にも最後な確率が高い宮崎駿作品。これを超えるど変態長編2Dアニメーションが生きてるうちに見られるのだろうか。
あ、今作のジブリ飯もめちゃくちゃ美味そうだった。
