直木谷ヒトシ

君たちはどう生きるかの直木谷ヒトシのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.2

このレビューはネタバレを含みます

人は必ずしも美しく完璧、とはいかない 誰もが誰もを無条件に信じ合うのは難しいし、子供どうしなら酷くシンプルな理由で喧嘩になったりもする 時として欺いたりもする 世界そのものを自分でなんとかするということはできないし、ままならないものも多い そんな世界で私たちは生きている
他方、悪意なく築いたはずの世界であってもその均衡を保つのは難しく、ほんの少しのバランスのズレであっけなく壊れてしまいかねない その積み重ねてできた地獄のような世界の中で、真人は複雑な出会いを果たした
母と同じ名、いや若い頃の母そのもの まだ自分を襲う運命を知らない、それでも自分自身の手をしっかりと引いてくれた人 その出会いを愛し、たとえ記憶をなくしてもその出会いが幸せだったことを覚えていてくれた人 その数奇な出会いをずっと心に焼き付けて、生きていてくれた人
少なくとも自分は、愛されて生まれてきて愛されて大きくなったのだ だから、父が愛した人を、その人と父の間の子を、愛そう 愛して生きていこう たとえそれがままならない世界であっても
……というふうには読めた 合っているだろうか 少なくとも「(私はこう生きてきた、そして)君たちはどう生きるか」ということなのかもしれない
先の世代の大人たちも悪戦苦闘して、ギリギリの世界を築いてきた それでもほんの少しの積み木のズレで解れてしまう世界だ それを忘れないで、でも囚われもしないで生きていってほしい そういう『願い』の映画……なのかもしれない