勵團饗頌

君たちはどう生きるかの勵團饗頌のネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

中3の娘と久しぶりに一緒に行った映画。

良いところも悪いところも両方たくさんある作品。

冒頭15分と後半30分はさすが宮崎駿と唸らされた。冒頭の15分は最近のアニメにいい意味で影響されており、非常に見応えがある。主人公の動きや周囲の人物の描き方が独特で引き込まれた。火垂るの墓のオマージュも含まれ、高畑勲監督への敬意を感じた。

今作はジブリ作品のオマージュと捉えることができる場面が多い。宮崎駿自身のセルフオマージュもあれば、前述の高畑勲監督作へのオマージュ、米林監督作の思い出のマーニーを彷彿とさせるカットなどがあった。特に、青鷺の造形やセキセイインコの軍隊などはシルヴァン・ショメ監督作「老婦人とハト」から着想を得たのではないかと感じた。オマージュにどのような意味を込めたのかは解りかねるが、効果的であったかと言えば、否。オマージュを多用することで既視感に覆い尽くされ、作品自体のオリジナリティが損なわれしまっている。少なくとも私はそのように感じた。既視感だらけの映画といえば、宮崎駿の長男、吾朗作「ゲド戦記」。中盤の日常生活を描き過ぎた中弛みや既視感の嵐など、息子の作品へのオマージュであれば、宮崎駿は相当の親バカなのかもしれない。

千と千尋以降、宮崎駿作品の緩急のつけ方というか、時間尺内のバランスの取り方が良くないと感じていたが、本作でもその特徴は健在。中盤の主人公の日常を丁寧に描く尺を半分にし、後半の盛り上がり部分を倍の尺にすれば傑作になったのではないだろうか。

本作も豪華声優陣が起用されているが、ミスキャストと言えなくはない部分がある。

牧眞人 演:山時聡真
→可もなく不可もなし。好演している。
覗き屋のアオサギ/鷺男 演:菅田将暉
→本作で最もミスキャスト臭がする。まんま菅田将暉。終盤には慣れたが、アオサギにはもっと適した人材がいただろうと思わなくはない。菅田将暉自体は好き。
若き日のキリコ 演:柴咲コウ
→まんま柴咲コウ。
ヒミ/若き日の久子 演:あいみょん
→本作のMVP候補。橋本環奈にも似た素敵な声。声優初挑戦であるだろうことから滲み出る初々しさが魅力となっている。
夏子 演:木村佳乃
→可もなく不可もなく、いつもの木村佳乃。最近声優に起用され過ぎて食傷気味。
眞人の父 演:木村拓哉
→悪くはなかった。が、キムタクじゃなくても成り立つ。
以降3名はあいみょんと並び本作のMVP候補たち。威厳や色気などを持ち合わせたおじいちゃん声を出せる本職声優がことごとく他界されている中、ジブリは俳優から素晴らしい声優を発掘してくれる。
老ペリカン 演:小林薫
→もののけ姫のジコ坊以来だと思うが、非常に印象に残る演技をなさる。
インコ王 演:國村隼
→好き。やはり味のあるコミカルに感じる演技をなさる。
大叔父 演:火野正平
→森山周一郎に聞こえなくもないイケボ。この人古谷一行とおっぱい追いかけてるイメージしかないけど、素敵な俳優さんなんだな、と改めて。

キリコを筆頭としたばあやたちにも
滝沢カレン、竹下景子、風吹ジュン、阿川佐和子、大竹しのぶなどがキャスティングされているが、ばあやたちのキャラクターデザイン共にパッとしない声。ハウル以降の宮崎の描く老人には魅力が無くなってしまった。老人キャラ大好きのわたしとしては大きな減点。
勵團饗頌

勵團饗頌