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君たちはどう生きるかの14のネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

ペリカンはなんでも鵜呑みにするものの象徴。「我を学ぶものは死す」の門からそう読み取れる。サギの羽を持つ眞人を飲み込めないのも納得いく。
インコは人語を繰り返す鳥。人の話を聞いてそっくりそのまま同じ言葉を使う人間には自分がない。愚かなやつ。
要するに自分の頭で考えろって映画だった。ディテールについて書き出すとあまりにも長くなってしまうと思うのでここでは書かない。
ただ、個人的に深く刺さったセリフがあった。

「それは積み木ではなく石です。言い方に悪意があります。それは墓と同じ石です。」

こんな感じのセリフ。作中の石にはもちろん意志という言葉がかかっていると思う。しかし何故積み木を対比させる必要があったのか。
それは、「普通に生きていくこと」と「表現者としての自分の対比」である。普通に生きていくということは、いくら思考を重ね、意志を積もうといえど、木のように朽ちていってしまう。忘れ去られていき、存在そのものが無になってしまう。
逆に創作物は残り続ける。表現者にとって創作物とは意志の籠った半永久的な墓であり、そしてそういった行為が可能なのは、人間だけなのである。
作中で眞人は頭にある悪意に満ちた傷を持ってして、こんな自分が石を積んでいいのかわからないと言った。宮崎駿は宮沢賢治と自分を比較して、自身をくだらない人間であると卑下していた。
しかし作品作りを続けている。どんなに自分がくだらない人間でも、自分の頭で考え、自分はこうしたいと決めたから、一見矛盾した行為を繰り返す。そこに彼の強烈な意志を感じられる。そしてそれは残り、自分の頭で考えるんだというメッセージは、これからこの映画を観るものに受け取られていくだろう。人間は創造によって死を超越できる。人間の性質を彼はよく理解している。あまりに人間的な生き方を選んだ宮崎駿だからこそ出てきた言葉だった。これは一介の表現者だから感じ取れたこと。背中を押された気がした。
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