すこーん

君たちはどう生きるかのすこーんのネタバレレビュー・内容・結末

君たちはどう生きるか(2023年製作の映画)
4.1

このレビューはネタバレを含みます

「ワクワク感」がずっと続く映画だった。
何か面白いことが起こりそうという感覚が消えないうちに何かが既に起こっていて、捉えきれないまま通り過ぎたものが沢山あった。読みきれなくて本当に悔しい気持ち。
表題の「君たちはどう生きるか」は投げかけの言葉であるため、どうしても明確な答えを探してしまうのだけど、この映画から探すのは難しかった。
…とまあ、文句のようなものを書いてしまったが、総合的に見て好きな作品だった。
なんというか、言いようのない不思議な好感度がある。
やっぱりジブリの描く風景はすこぶる美しいし、人間の表情は細やかだし、いちいち動くアニメーションに興味が尽きない。
個人的に自転車人力車(?)の背もたれが、座った人間の重みでぐわんと揺れる描写にやたら痺れてしまった。あとは、産屋のカーテンが本当に見事な織物だったこととか、大叔父様の間に続く風景の色彩が異常に綺麗だったこととか挙げ出すとキリがない。
いや、色々言ってるけど、結局空中に浮かぶぽわぽわな存在で全て許せてるだけかもしれないとも思う。

以下は物語の内容について。
主人公が異世界に呼ばれていたのは、異世界の主を継いで欲しいからだろう。
しかし、その異世界は主人公にやたら試練ばかり与える。
住人に少し優しくされたところで、これでは主人公は異世界を愛すようにはならないだろうし、最終的に現実に帰るという選択肢が当たり前にも感じてしまう。
この物語の主人公には、物語の主人公たりうる重大な要素である「葛藤」が細かく描かれていないから、主人公の選択にドキドキしないのかもしれない。
多分、継母を救うか(受け入れるか)、継母を見捨てるか、という葛藤が物語の中心にあったと思うけど、そのへんはさらりと物語が進んでいくからことを難しくしているのだと思う。
主人公は最終的に、継母を受け入れる選択をした。それは美しい世界を1つ滅亡させる選択でもあった。それが主人公の「生き方」であった。それ以上でもそれ以下でもないのかも。

以下はメタな感想。
大叔父様は宮崎駿自身なのかなと思った。
自分の美しい世界を構築して、沢山の人に愛されているけど、後継がいないからいずれ忘れ去られてしまう…。そんな哀愁を感じた。
映画には、トトロ的な木のトンネル、千と千尋的な異世界に続くトンネル、ハウル的な星の降る草原など、ジブリの過去作の要素が要所要所に見られたから余計にそう感じたのかもしれない。
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